コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

渋谷今昔物語

昭和女子大学内、光葉博物館にて「羽化する渋谷」展をやっていて見に来た。新宿駅の巨大立体模型や山手線全駅の立体模型を造られた田村研究室さんの展示。

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‪したら、いきなり渋谷駅全路線の発車時刻をプロッティングして「時刻譜」としている展示があって頭を抱えている(楽しすぎて!)。‬なお展示室内では、これを基にした音声が鳴っている。‬

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この立体模型、これまでに何度も度肝を抜かれてたけど、今回何がすごいって、渋谷駅(とその建っている土地)を時系列で表現したこと。

 

ってまぁその辺のことはデイリーポータルZの記事に詳しいのでそちらをご参照だけれども、それでもやはり展示会場に行って、駅そのものの変遷や、渋谷という名の「谷」の変遷を見るのはすごい楽しいし勉強になる。撮影はNGだったので、元々買うつもりだった図版で堪能せんとす。

‪★渋谷駅の立体模型が時系列になった https://dailyportalz.jp/kiji/shibuya_station_model

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で、中央の巨大模型。これは2012年の「最も拡張していた渋谷駅」と、2020年の「渋谷駅最終形態(予定)」が比較して見られる。渋谷駅迷宮が迷宮たる所以と、それをなんとかしようと努力する各鉄道会社&都市開発の意思が見えて面白い。

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その際たるは「渋谷川」の移動。元々暗渠として駅の地下を流れていた渋谷川の位置を動かすことで動線の劇的な改善が行われたのが、最近できた渋谷スクランブルスクエアのあたりだったりする。写真右手前から左奥への弧線(下1枚目)が、S字に変わって(下2枚目)、階段が折り返しから一直線に変化してる。
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やはりこうして見比べると、土地の活用や都市開発の一端が実感をもって楽しめて、良いなー。

 

あと、女子大だけど入っても捕まらなくて良かった!

 

 

羽化する渋谷展を見たら渋谷歩き(駅周辺)をしたくなり、出来たばかりのスクランブルスクエア来たら、まずは案内表示の銀座線が、来年以降の新駅仕様になってて興奮するよね。工事中の今しか見えない風景が随所にあって良い。

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そして、そんな予定じゃなかったのに、スクスクの展望台にも上がっちゃった。すげー!この開放感と見渡せる広がりは都内随一じゃないかしら。ガスに隠れた富士山方面、東京二大タワー、新国立競技場、宇多川と渋谷川の合流地点(暗渠)と工事中の宮下公園などなど、見どころたくさん。

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椅子にハンモックもあって、居心地も最高。面白かったのは鏡張りの壁があって、その前に立って写真を撮ると、自撮りとは違う雰囲気で展望景色と相まった写真が撮れること。些細なことだけど、アイデアだなぁ。

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その後、スクランブルスクエア展望台から一気に地下二階まで降りてきて、駅構内を流れる渋谷川(のガワ)を見学。こちらも詳細はDPZの記事参照だけど、コスメ祭り看板の裏は川だなとか、この定期券売所はリバーサイドだな、とか想像巡らすと超楽しい。

渋谷川が天井から飛び出す広場ができた
https://dailyportalz.jp/kiji/tenjo-nagareru-shibuyagawa

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渋谷がいま、アツい!(地形マニア的な意味で)

お値段以上?似鳥美術館

小樽芸術村は、お値段以上なニトリが運営する複合アート施設(創業会長が似鳥さん)。

 

主要な館が三館あるけど、全部巡ってみようと、まずは旧北海道拓殖銀行小樽支店を使った「似鳥美術館」に往訪。

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ステンドグラス、ガラス工芸品、日本画、西洋画、版画、木彫などが5階分の建物に詰まってるけど、特にルイス・C・ティファニーティファニー創業者の息子)のステンドグラスは圧巻。
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ステンドグラスの主流だったガラスに顔料で絵付けをする方法ではなく、ガラスだけを使って絵柄を表現しようとした人らしく。ガラスを様々に加工し、新しい技法を開発し、重ね合わせ方を工夫して、混色や遠近法を表現しているのが、技巧的に見事で、見て美しい。
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絵画彫刻系は撮影不可だったのだけど、日本人作家のものを中心に、いろいろ集めたのを頑張って分類したのかな、という感。横山大観平山郁夫棟方志功高村光雲と、さすがに作品に力のあるものが揃っていて、ひとところでまとめて見られるのは僥倖。


ガラス工芸はガレやラリックが中心で、その点では各所で見るし日本人受けする作品だなぁ、と思うけど、ランプが集められた展示ボックスは壮観だった。

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あと、エンパイア・ステートビルの模型に「似鳥会長が『かっこいいね!』と一目ぼれして購入したものです」という解説がついてて草。かわいいか。

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2軒目は「旧三井銀行小樽支店」。こちらは銀行施設そのものが展示品で、明治期に建てられたルネサンス様式の建築模様を堪能できる。

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や、しかし他の銀行もそうなんだけど、本当に明治末期から昭和初期の小樽って、金融と経済の街だったのだなぁ。


豪奢なあれこれが楽しいけど、面白かったのは地下にある「貸金庫回廊」。貸金庫室が地下にあり夏は結露するので、それを避けるために部屋を囲うようにタイルの回廊を作ったのだとか。ただそれだと死角が出来てしまうので、警備のために四隅に鏡を置いて回廊のどこにいても人が見えるようにした、と。


言葉で聞いてもどういうことか分からないと思うけど、これ、正面にある鏡に向かうと、自分の後ろ姿が見えるの!斜め45度の鏡が四隅で映しあって、回廊を一周するの!当たり前なんだけど、実際に見てみると少し不思議。

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あと、やっぱりここにもステンドグラス。この後行く小樽芸術村3軒目はそのまま「ステンドグラス美術館」で、どんだけステンドグラス好きかよと。
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3軒目は「ステンドグラス美術館」。こちらは旧高橋倉庫なる大豆を納める倉庫を使った施設。階段と柱との造作が無骨で良い。

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そこに飾られるステンドグラスは、19世紀後半から20世紀初頭にイギリスの教会にあったものだとか。当然、キリストモチーフのものがメインだけど、イギリスの聖人や風土も描かれて、歴史文化的な視点からも興味深い。

 

そんな中、やはり磔刑図や最後の晩餐なんかは目立つよねー。建物の雰囲気と相まって、すごく雰囲気のある空間。


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あと、こちらは先の似鳥美術館にあったルイス・C・ティファニーの作品と違い、昔ながらの顔料を使った絵付けをしているので、やはり見た目も異なり、その表現手法の違いを楽しめるのも面白い。

 

 

三館共通券で2000円。通常の美術展よりちょい高めだけど、すごせる時間を踏まえるとお値段以上かも!

名作vs現代美術

箱根は仙石原方面にあるポーラ美術館、そこで初の現代アート展をやるってんで初めて行ってみた。「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」は、モネ、ピカソロダンなどの作品をベースに現代アーティストたちが再解釈、再構築した作品が並ぶ。なおシンコペーションとは音楽用語だとか。

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いやー、これは。見ている分には楽しいけど、作家にとっては過酷な展示だな。

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ベースになる作品が当然だけど名作と呼ばれるもの揃いで、すなわちそれだけの強度とコンテクストを持っている訳で、それを解釈し再構築する現代作家の方は、生半可な作品では完全に負けてしまう。


正直ワシも「え、これは……」と思ってしまう作品もあって、この企画を考えたキュレーター鬼じゃね?と感じる部分もあり。でも、名作の再構築、という部分を捨てて見ると、それらの作品にも面白いところは出てきて、これは本当に難しいなぁと。


もちろん素晴らしい作品も幾つもあって、個人的な一番のお気に入りはダリのシュールレアリズムな絵画を再構築し空間作品にしたアリシア・クワデ「鏡の向こう側」。騙し絵の感覚を空間として表現し、それでいて鏡とガラスと電球の取り合わせはそれ単体で美しい。

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なお、ポーラ美術館は初めて行ったけど、屋外展示も含めていい美術館だねー。現代建築と自然が融合して居心地が良い。半日くらいのんびりしてても良い。

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……ということで、行って半月以上過ぎたけど、この展示が明日までなので今更感想書いてみた。週末お時間ある方は是非に。

無人島、暗闇の美術島

横須賀は三笠公園の沖に浮かぶ猿島。昼間はBBQ、夏なら海水浴で賑わい、また弥生時代の人の痕跡や、明治時代に置かれた砲台や戦闘拠点の遺構もあるが、夜は無人島になる島。その夜を使って開かれている「Sence Island -感覚の島- 暗闇の美術島」に来てみた。

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島に着いて最初にやること。それはスマホの封印。明かりを最小限に抑えて作品を見せる効果と共に、写真を撮ることに夢中になって作品や島の自然を感じられなくなるのを防ぐため。その狙いはよく分かるし、今回、それは上手くハマっていたように思う。


やはり、写真を撮ろうとする、すなわち記録に残そうとすると記憶に残らないもので、今回ワシはガイドツアーを申し込んだのだが、解説を聞き漏らすまいとなるし、作品に向き合う時の集中力も違う。最近は写真でのバズを狙う施策が多い中で逆張りになるけど、久々にこの感覚を楽しんだ。


作品は、猿島の自然や歴史、地形や施設を活かしたものが多く、暗闇の無人島であることを上手く使っている。けど、ワシは何度か猿島に来たことがあるので「おー、ここにこう来ますか」が楽しめたが、初猿島だと島の個性を掴めずに終わってしまうかな、とも思った。それはそれで一つの楽しみ方だけど。


個人的に気に入ったのは、回転ジャングルジムに映像を投影する「遊具の透視法」。あと、海沿いで、聴診器を耳にして自然音を聴く「地球交響楽団」は、風や波の音を拾いつつ、自分の頸動脈に当てると脈動音が聞こえて、それらが混じってエモい体験になった。


写真&動画に収まってるのは、ほぼ唯一撮影できる乗船場近くの「prism」。キラキラが綺麗、なだけではなく、これ、普通に見ても分からないけど、ある角度から見るとある形になっているらしい。

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で、ワシはガイドツアーを申し込んだんだけど、これお勧め。


スマホもなく、ペライチの紙とミニライトを持って巡るのだけど、普通に回ると圧倒的に情報が足りない。それは主催者の意図するところなので、見方の好みではあるけど、ワシはガイドさんの解説を聞きながら巡れたことで何かと腹落ちした。


とはいえガイドツアーに申し込めるのは、三笠公園側受付にて各船先着15名まで。今日は出航1時間前と超早く着いたけどそれでも5番目だったので、45分前くらいには来た方が良いかも。
なおワシは、ガイドツアーで一周した後、独りでもう一周。解説を反芻しつつ、ほぼ暗闇の中を独りで歩くのは、作品との対話や、島や自然との触れ方が1度目とは異なった感覚があり、面白い。

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木〜日の夜だけ、人数限定で12月1日までと短いイベントだけど、ここだけの体験が出来るのでオススメ。

ミステリークロック

“ミステリークロック”って知ってる?


文字盤が透明で、時針分針が宙に浮いているように見える置き時計。宝飾メーカーであるカルティエが20世紀初頭に考案した不思議なアイテム。

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引用、参考:

https://www.cartier.jp/ja/%E3%83%A1%E3%82%BE%E3%83%B3/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9-%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/mystery-clocks-cartier-collection.html

 

ワシは「ギャラリーフェイク」なるマンガでその存在を知り、仕組を想像してワクワクして。そしたら大学時代に独り旅したロンドンは大英博物館でたまたまカルティエ展をやっていて、実物を見て興奮したものだ。

 

それ以来、約22年ぶりの対面をしに、国立新美術館カルティエ、時の結晶」来てみた。

 

いやー、美しい。ミステリークロックも、プリズムクロックも、そして宝飾品の数々も、何をみてもまずは「……美しい」ってなるの、実はすごいことだと思うのね。

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すごい技術や、惜しげもなく宝石の数々が投入されているのに、繊細なデザインと組み合わせでシンプルな美しさに落とし込んでる。
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そう、今回強く感じたのは、宝飾デザイナーのすごさ。ひと粒何十万だか何百万だか、下手したらそれ以上の価値を持つ宝石を、大胆に組み合わせる作業って、とんでもなく大変だしストレスだと思うのよ。
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俗っぽい発想で恐縮だけれども、それをなし得る職人の豪胆さと繊細さが、この美を作ってる。
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そんな技術に想いを馳せつつ、シンプルに美を堪能できる空間、オススメ!

https://cartier2019.exhn.jp


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極音・銀河鉄道の夜

映画「銀河鉄道の夜」極音上映にて鑑賞。杉井ギサブロー監督の、キャラクターが猫中心のアニメ。


やー、関係者全員頭おかしいな!(誉めてる)
改めて見ると、銀河鉄道の夜の原作も相当へんてこな話だし(誉めてる)、これを猫キャラで描いた漫画も変だし(誉めてる)、それをこの暗いタッチで描いた監督もおかしい(誉めてる)。


今回立川までこれを観に行ったのは、極音上映だったから。本作、音楽は細野晴臣氏で、YMOを子守唄に育ったワシにはそれだけでネ申作品だけど、なのにこれまで屋外やらホール的な所やらでしか観たことがなく、まともな、それもシネマシティのキチガ……こだわり抜いた音響で聴けるってことで。


まずその音楽。シンセサイザーの興隆期でもある故か、テクノとはもちろん全然違うけど、打ち込み系の音がベースで、でもそこに暖かみとか悲哀的な感情を乗せているから、たぶん当時としては斬新だったろうし、今聴いても魅力的。別に探す必要はないけど、近しいのはゲーム音楽


物語は……まぁ暗いし、それを猫で表現されるとあれこれシュール。色遣いや動きなどに、勝手にあれこれ思考を巡らせてしまうのは、製作者の思う壺なのかもしれない。様々な表現の「銀河鉄道の夜」を観てきたけど、やはり特異な作品だと思う。


フィルムはさすがにかなり傷ついていたけど、それがまた味に感じる。


しかし賢治の「銀河鉄道」という発明は本当にすごいな。作品そのものもさることながら、後世にこれだけの創作の種を巻いていった功績は本当に大きい。

 

余談。‪シネマシティにてこの4作品が一枚のボードに貼られてるのすごい怖さあるけど、なんだかんだ銀河鉄道の夜もちょっとホラー感あるよね。‬
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現代美術と文学性

国立新美術館「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」往訪。狙ったわけじゃないのに、行ったのが文化の日で入場無料だった!

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展示の解説にこんなことが書かれている。

古代ローマの詩人ホラティウスが『詩論』で記した「詩は絵のごとく」という一節は、詩と絵画という芸術ジャンルに密接な関係を認める拠り所として頻繁に援用されてきました。以来、詩や文学のような言語芸術と、絵画や彫刻のような視覚芸術との類縁関係を巡る議論は、さまざまな時代と場所で繰り広げられてきました。】

 

ちょっとずれるかもしれないけど。ワシは自分が言葉と文章の人だと思っているので、絵や音楽などを見聞きしても、それを言葉にするとどうなるか、というのをいつも気にしている。本当は映像にした方が再解釈や人への伝達がしやすいだろうな、というものも、出来れば言葉に変換したい。

 

なので、この展示のテーマ自体がワシの生き様に近い(大袈裟)もんだなぁ、と見てみたが、ふむふむなるほど、やはり難しいもんだ。


文学性、ワシはそれを物語性とも言い換えたいが、伝わる作品と(ワシには)難しい作品とあり、そのこと自体がまた思考を深くさせるので、鑑賞できたのは良かった。

 

6人の現代作家が参加していたのだが、その中でお気に入りを紹介していくと。

 

北島敬三氏。今回の作品の中で唯一写真のみの展示だったが、その写真には、社会主義が消えゆこうとしている時期の東欧やソ連崩壊直後の旧ソ連各国の人々の顔だったり、日本の限界集落や被災地で廃墟などが撮られている。すなわち、撮影の時点でその背景に膨大なコンテクストがあるわけだ。


撮影年、撮影場所が提示されるだけで、受け手は勝手に物語を妄想していく。廃墟や衰退していく社会に、悲哀なり滅びの美しさを重ね合わせる。その良し悪しはさておき、そうさせる撮り方をしているのは面白く、個人的には今回の出展作の中で一番文学性を感じたかも。

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小林エリカ氏は写真、映像、小説、造形と盛り沢山の表現手法で、テーマもオリンピック、聖火リレー第二次世界大戦、原爆と盛り沢山。究極的には「火」に収斂するのだろうが、これらを融合させようという発想はすごい。技法が多岐に渡った分、やや散漫になった感も禁じ得ないけど。


そして、こちらもやはりテーマにコンテクストが詰まっているので、特に今を生きる日本人には様々な物語性と妄想を沸き立たせると思う。先の北島氏との違いで語ると、作者側の語っていることが多いので、妄想できる幅はやや狭くなってはいるのだけど。

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このお二方だけを比べても、表現手法はもちろん、作者側の(表現によって)語っている密度と、受け手側の語れる幅に違いがあって、それだけでも面白い。


最終的にはすべて「解釈の問題でしょ」と言われてしまうかもしれないが、解釈できる楽しさを、受け手として味わいたいのだ。

https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/gendai2019/