コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

本好きの戯れ事

公共性とビジネスの狭間で 国会図書館、書籍電子配信の取り組み
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/15/news020.html


国会図書館の蔵書の電子化について、図書館長や担当部門長に取材した記事。興味深い試みが始まりつつあるようです。


で、紙という媒体が好きで、なにより本が好きなワシには、いろいろ考えさせられるものがありまして、twitterなどでつぶやいてみましたが、ちょっとまとめ直してみる。まず、図書の電子化そのものはやってしまったものとして、その活用についてですね。


当然ながら、電子化をしつつ国会図書館でしか使わない、っていうのはものすごい資産の無駄遣いなので、他所で活用できるようにする。で、まずは地方図書館と共有できるようにすることかな、と。


その場合、データを使いたい(=蔵書にしたい)地方図書館は、その本の分、一定の値段を払って出版社に還元、ってのもありなのではないかな、と思います。蔵書として欲しい冊数分のコストを、従来の書籍購入と同様に支払う。で、その冊数分、同時にその書籍電子データにアクセスできる権利を買う。


で、購入冊数分のアクセス権の数だけ、利用者に「貸し出し」をすることができる、と。利用者の個人端末(パソコンなりケータイなり)からその本へアクセスできる権利を、1週間なり2週間なりという今の図書館と同じスパンで付与する、というスキームです。


ここは、ワシは有料にしても構わないと思いますが(それこそ記事中で「電車賃程度に数百円でも」と書かれているように)、まぁ「図書館=無料」というのが常識になっている世の中では、個人に支払わせるのは難しいかもしれません。


こうすれば、著者・出版社への還元は確保できると思うのですが、問題は、今度は取り次ぎだとか本屋だとかの流通を担う産業が打撃を受ける点ですね。まぁそこは、電子データでなく本として欲しい個人向けに商売をしてもらう、今のCD産業に近い形になっていくのかもしれませんが……ここはまだ考えが浅いです。


ともあれ、電子コンテンツの著者・出版社への還元を、公共団体が担うか、個人が担うか、あるいはその両社が担うか。現状、図書館の公益性と電子コンテンツへの意識を考えると「個人」からの徴収は難しいんだろうなぁと思っています。


『電子コンテンツの流通を、いかにお金にする(経済として成立させる)か』


これは、書籍の電子化が進む中で、今のネットコンテンツと同様の課題として発生するのでしょう。ワシは最近よく書いてますが(そうでもないか)、消費者利益を考えてなんでもかんでも安価に、あるいは無料にするという傾向は、よろしくないと思います。


それは結局、それを産み出すある産業を衰退させ、それが連鎖すれば経済を停滞させ、巡り巡って社会が停滞していく。この悪循環は断ち切らないといけないと思います。(かといって、全ての産業を保護すべきか、といったら、それはそれで違うとも思います。社会の進化に付いていけない産業なら、廃れてしまうのが世の常ですからね……)


で、ここまで考えたときに。


音楽業界におけるJASRACとかの権利管理団体の存在って、今後産業が電子化して、権利売買の時代がくるなかで、業界全体の「利益確保」のためには重要なのではないか、と感じたのです。


や、別に今のJASRACのスキームがそのままあてはまるってワケじゃないですし、今だってその流通管理の方法に問題がないとは思っていないですよ。


ただ、電子図書の流通におけるJASRACのような権利管理を行える団体、すなわち利用料をきちんと徴収し再配分するための専門の組織、ないしはシステムがあって、それによって著者・出版社への利益還元が可能な仕組みが出来れば、それはそれで、ひとつの可能性じゃないかな、と思います。


ちょっとズレますが、ワシは、古本の売買においても、著者・出版社(少なくとも著者)に利益を還元するべきだと考えています。例えば古書店は、販売価格の10%でも著者・出版社に戻す。取っかかりとして、ブックオフのような大手がPOS管理をしてみれば可能な仕組みですし、そのくらいの価格は消費者に負担させてもいいと思います。100円の古本が110円になっても、買うと思うんですけどね。こうすれば、古本流通からもきちんと製作者に利益還元ができる。


ちょっと話がとっちらかりましたが。


本や紙メディア、そこに綴られる物語や世の中のこと、これらを便利に利用したいとは思いますが(電子化)、かといって経済的に衰退してほしくない(産業としての維持)。書いた人には、面白いものであればきちんと利益を還元したい。


GoogleやAmazonの試みがそれを満たすのかはまだ分かりませんし、国会図書館の試みも多くの課題が山積しています。でも、面白いものを無くしたくはないし、それに必要なコストは、自分の裁量内で惜しみたくはないな、と思います。