コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

10年一日

今日、日本武道館では母校の卒業式をしているはずです。一学年が2万人いる母校では(その全員が同時期に卒業できるわけでも、卒業式に来るわけでもありませんが)毎年3月25日を借り切っているらしく、それでも午前の部、午後の部に分けて二回転の卒業式だった記憶です。


10年前、午前は日本武道館で全学卒業式に並んだワシは、友人達と学部のあった江古田に移動し、午後の学部の卒業式、そして学部主催のパーティー的なものに出ていたのでした。


宴席は卒業生を見送る後輩たちも参加。学内でで芸術祭の役員をしていたワシは、確かその後輩から花束を貰ったんでした。その中に一輪ブラックコスモスだか何だか言う黒い花が刺さっていて、花をアレンジした後輩に「腹黒いトモサク先輩をイメージしました」なんて憎まれ口を叩かれて。


学科棟に移動しては、それこそ芸術祭で大変お世話になった職員の方々、それに先生たち、もちろん友人や後輩とも記念写真を撮りまくって、お世話になった場所との決別を進めていました。が、それもそんなに時間をかけられず、この日最後の大仕事のために池袋・サンシャイン60の展望台へ向かいます。


ワシのいた文芸学科では、どうやら長年学科での「謝恩会」は開かれておらず、ゼミや友人グループ単位での飲み会だったらしいのですが、卒業の半年くらい前、複数の友人から「やりたいねぇ。トモサク、企画してよ!」と三々五々に声をかけられ、つい幹事として実施してしまったのです。


夜景美しいサンシャイン60の展望階の一部を貸し切っての宴席。当初心配された出席者も、なんだかんだで学科生の半分以上が、そして何故か他学科の同級生までもが参加し、先生方もやはり半分くらいが来てくださって。手伝ってくれた友人や後輩のおかげで、復活謝恩会は当初思惑の数十倍の素晴らしい会になりました。


その会の最後、裏方に徹していたつもりのワシでしたが、友人・後輩の思わぬサプライズでみんなの前で幹事オツカレの花束を頂戴してしまい、嬉しいやら照れるやら。その後、二つの花束を抱えたまま朝まで飲みまくっていたのでした。


そんな、10年前の一日のことを、今でもまるで一日前のことのように記憶しているワシ。卒業というイベントそのものに大した感慨はありませんでしたが、卒業の日に起こったすてきなイベントの数々は、全く色褪せること無く、そして恐らくは若干の美化をされて、こうして鮮明に思い出すことができます。





あれから10年。就職活動をせずに自分で事業を始めていたワシは、2年ほどデザイナーやイベントプランナー的な仕事で社長の真似事をしていましたが、その事業も鳴かず飛ばずになって今の勤務先に中途で入社。神社では若手をまとめる長を二年くらいやったり、あるいは人並みに惚れた腫れたもありつつ。


あれから10年。通っていた校舎は新しく建て代わり、ワシの記憶にある学び舎はもう存在しません。そんな、懐かしい知らない場所は、果たしてこの卒業生を迎えた時、どんな空気で包んでくれるのでしょうか。あるいはくれないのでしょうか。





ふと今日のようなきっかけで思い出せば、まさに10年一日、短かったような長かったようなこのひと時が思い巡ります。良いも悪いもありましたが、総じて言えるのは「楽しかった」ということ。


今日卒業する後輩諸氏、おめでとうございます。モラトリアムからの脱出、その先にある社会(あるいは世界)は、その気概さえあれば案外楽しいものですよ。