コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

悪童沈没

昨日から今日にかけてやたら著名人の訃報を聞きますが、まぁ身も蓋も無いことを申し上げるなら、日々何万人という方が亡くなっている中でこんな日々もあるんだろうな、と。相対的に語るわけではありませんが、亡くなった皆さまのご冥福はお祈り申し上げます。


そんな中、やはりワシにとってインパクトだったのは、SF作家・小松左京氏と、その裏で日本ではほとんど情報が回っていないようですが、ハンガリー出身の作家アゴタ・クリストフ氏の訃報。


小松左京は言うまでもなく、日本のSF作家の第一人者……としたり顔で書きながら、あれそういえばワシ、小松左京の小説ってほとんど読んだことが無いのでは?と思うに至ります。一冊も読んだことが無いってことはさすがに無いと思いますが、何かの小説集の一部で読んだか、ともあれ記憶にない。恐らく代表作の「日本沈没」も読んでない(少なくとも内容が記憶にない)。


まぁ、小学生から十代のころは、あまり作家性や系統やジャンルを気にせずに乱読していたせいもあるのでしょうが、個々の作品の印象が薄れているんでしょうね。最近でこそ、mixiレビューなんかで記録を残していますが。てことで改めて(か、お初か)、日本沈没から読み直して見ようと図書館に予約をしてみました。


ところでそんな若かりし頃の乱読の中で、逆に強烈に記憶にあるのがアゴタ・クリストフの代表作「悪童日記」。書名を聞けば「ああ、知ってる!」という方もいらっしゃるでしょう、氏の代表作です。まぁ、そもそも寡作の作家ですが。


アゴタ・クリストフWikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B4%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95


悪童日記シリーズは三部作。
悪童日記』 Le Grand Cahier (1986年)
『ふたりの証拠』 La Preuve (1988年)
『第三の嘘』 Le Troisi・me Mensonge (1991年)
何かのテレビで知って、図書館で「悪童日記」を借りて夢中になって読んでしまい、その後「ふたりの証拠」「第三の嘘」と続けて借りたので、やはり読んだのは高校生か大学生くらいだったのでしょう。作を追うごとに面白さが薄れてしまったのは残念でしたが、一作目の「悪童日記」は本当にすごかった。


これは、翻訳した堀茂樹氏のセンスの賜物でもあると思うのですが、「ぼくら」(一人称複数系)で描写される世界と、その「ぼくら」の描き方が尋常でない。あまりツッコムとネタバレになりますが、通常の小説にはあるべき描写が一通り、ごっそり抜け落ちている。この文体は衝撃的でした。堀氏は、本作の翻訳で一気に知名度を上げたのだとか、それも得心です。


そんな「悪童日記」とは、数年前にひょんなことから再会して、それはブラインドでの本の交換会っぽいものをした時に、ワシのところに回ってきたのが悪童日記でした。手元に置けることになった喜びを感じつつ、実はまだきちんと読み返しさないまま月日が経ってしまいましたが、これもまた、近々ページをめくってみたいと思います。


偉大なる作家が他界されたのは残念ですが、本人が去っても本は世の中に残る。いやー、本当に本って、素晴らしいですね。