コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

三味線配信、手妻師配信

今日の夜は、桜木町にあります「横浜にぎわい座」なる劇場に行って参りまして、演目は、三味線奏者の杵家七三さんと手妻師の藤山晃太郎さんによる二人会「信」。


そしてこの公演は、YAFという、公益財団法人による、初の「主催有料ネット配信」を行ったものでした。


って、まずは「手妻師」ってのが聞き慣れない方もいらっしゃるとは思いますが、今風に言うなら「マジシャン」。江戸から続く古典奇術の芸事師です。で、この藤山さんは、某ncnc動画ではちょっとした有名人というか、再生数の多い動画に出ている&上げている方なのですが、ひょんなことからご縁があって知己を得ました。


で、今回。いろいろとご一緒させていただいて、公益財団法人さんにチャンネルを持っていただく&そのアカウントで有料配信をしていただく、というプランにささやかながら協力させていただいて、今日の日を迎えました。(や、実際ワシが何をしたわけでも無いのですが)


古典芸能、と言われるものを多く公演する劇場がアカウントを持ち、ネットで、ニコニコでその舞台を(ものによっては有料で)配信していく試み、ってのは、大袈裟に言うなら「古典芸能(と呼ばれるもの)」が現代を生き抜いていく、ひとつの試金石になったのではないかと思います。


その辺は、藤山さんのブログに書かれているので、ご興味のある方は是非に。
http://t.co/R5Y4lN65


そんなこんなで公演自体にもお邪魔してきたわけですが、や、まずは自分の仕事云々を置いといて、その舞台に目が釘付けです。第一部では、杵家七三さんを中心とした邦楽器による演奏。邦楽器なのに曲目は、クラシックの「剣の舞」や、いわゆる「東方」の「BadApple」をアレンジした「傷林果」。そこに、民謡メドレーや長唄も入り、もろに今日の客層を意識したのでしょう、「入りやすい」構成。


第二部の藤山晃太郎さんによる手妻は、先ほどまでの邦楽器の皆さんの生演奏での、奇術マジックの数々。当たり前すぎて褒め言葉にもならないでしょうが、さすがの手際、演出で、特に手妻は「見立て」が大事な芸事ですが、それも鮮やか、拍手の音も高なります。


そしてネット。有料であるにも関わらず結構な方々が視聴し、ある面ではコメントで、会場以上の盛り上がり。これまた巷で有名な蝉丸Pさんが適度にユーザーさんと絡み、これまた不思議な一体感が醸されていました。


うん、なんか確実な「手応え」を感じます。これは入口に過ぎませんが、伝統芸能が立ったひとつの入口、そこに立ち会えていたのかもしれません。


伝統芸能によるこういう動きを、現代への迎合だとか、伝統破壊だとか言う批判はよく聞きます。でもワシは、どんな伝統芸能も、始まった時はその時代の「現代」を映しており、トレンドだったワケで、それがたまたま長く残ってきたから、そこに「文化」「伝統」をあてはめているだけで、そうはいっても「芸能」であることからは逃れられないと思っています。


それは取りも直さず、現代と言いますか、同時代性からは逃れられない、ということでもあり。


「文化」「伝統」を守ろうとするのと同じくらい、「現代的」であることは芸能に求められる基本事項だと思います。その両者が成り立つバランスの上でチャレンジングな試みをされている藤山さんは、活動的であり、本当にすごいな、と感じます。


会場には、明らかにncncを見て杵家さんや藤山さんを知ったであろう、こういう場は始めてであろう若者達が、終演後ロビーに出てきた演者さんを写メに納めていました。またネットで見ていた人の8割は、伝統芸能の公演に行ったことが無かったようで、しかもコメントには「生(現地)で聞きたい」とか「会場に行けば良かった」というものがちらほら見えました。


こうして、まずは知ってもらうこと。


これこそが、伝統だろうが前衛だろうが、芸能や芸事の基本なのではないかな、と強く意識した夜でした。


杵家七三・藤山晃太郎 二人会『信』
http://t.co/KXOPpHAj
タイムシフト(有料)で向こう一週間見られます。宣伝乙。