コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

秘境駅その1〜海底に至る風

秘境駅」って単語も最近では比較的メジャーになってきた……と思っているのは思い込みかもしれませんが、旅好き、あるいは「鉄」(鉄道マニア)の間ではまことしやかに旅先のひとつとして挙げられています。かくいうワシも、わざわざ旅先に選ぶことは無くとも、旅の途中にあれば寄ってみたいな、と思うほどではあります。実際、秘境駅までは言わなくても、変わった駅などはわざわざ降りたことも何度か。


そんな秘境駅をランキングしている古参サイトが「秘境駅へ行こう!」。牛山さんというサラリーマンの方が、趣味の旅を続けて記録していくウチに有名になり、トラベルライターもされるようになったとか。
http://hp1.cyberstation.ne.jp/hikyoueki/


そんなサイトで堂々の1位を記録し、界隈ではすっかり有名なのが、北海道は室蘭本線にある「小幌駅」。長万部駅から二駅ながら、トンネルとトンネルの間にある、駅とは名ばかりの場所と言われています。何しろこの駅に通じる道は無く、人家も無く、三方は山に囲まれ、海に通じる道は崖になっている……というところ。細かい歴史にご興味の方は先のサイトやWikipediaなどもご参照。


いつか行ってみたいな、とほんのり思ってはおりましたが、まさかの会社の人から「秘境駅に行きたいんだけど計画建ててくれません?」なんてことがキッカケで行くことになるとは。世の中、何がどう転ぶか分からない、それは旅の始まりにおいてもそうですし、旅の途中も然もありなん、ですな。


ともあれ、皆さんの希望や聞きたいところをヒアリングし、ちょっと贅沢も考えて、メンバーも男4人、肩書きだけ抜き出せば「本部長」「社長」「編成マネージャー」「事務局長」のちょっと風変わりなメンバーとなり、中々に珍妙な旅の、始まり始まり。



土曜日朝に東京駅集合。リニューアルしても待ち合わせに一番便利なのが銀の鈴なのは変わりなく。まずはここから東北新幹線で新青森に向かいますが、今回選んだシートは「グランクラス」。はやぶさ型車両に連結された「ゴージャスなグリーン車」で、飛行機のファーストクラスをイメージしたものだそうです。とはいえ、「はやぶさ」の切符は取れなかったので「はやて」なのですが。


シートは横3列で縦に6列と、大変広々。シートの角度も手元で自在に変えられ、快適な座り心地です。飲物はアルコールを含めて飲み放題。軽食として、和洋のお弁当が選べます。ワシの頼んだ和軽食は、青森の食材を使ったおかずが詰め込まれています。サイトでは東京発の弁当は東京の食材と書いてましたがそうでもない模様。ビールやワインのグラスにはグランクラスのロゴが配され中々に可愛らしい。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

和軽食とビール


朝っぱらからのビールの影響か、また仙台以北、特に盛岡以北はトンネルが多くて位置ゲーも出来なかったので、ワリと長い時間を睡眠に費やし、三時間半ほどで列車は新青森駅に到着。さらに先、函館へと伸びていく新幹線線路を見ながら、在来線に乗り換えます


乗り換えの30分ほどを使っての昼食は、新青森駅にある青森の物産館「あおもり旬味館」で、狙いをつけていた「黒石つゆ焼きそば」。黒石市の郷土料理というかB級グルメとしてで、焼きそばに濃いめのツユが掛かっている逸品です。さらにここには、カレーの乗ったものがあるということでワシはそれを注文。元のものにカレーソースを載せただけですが、ジャンキーさが増し増し。うん、中々に美味。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

黒石つゆ焼きそば(カレー乗せ)


指定席が取れなかったスーパー白鳥の自由席に乗り込んで、青函トンネルへ向かいます。自由席も少し混み気味でしたが、青森で半分くらいが降りたので案外平気かも。そして我々が向かうはトンネル内にある「竜飛海底駅」。列車はたくさん通りますが、行きにくい、という意味ではここも秘境駅です。


かつて、青函トンネルが開通した頃は、北海道側の吉岡海底駅と供に、見学のための列車が結構停まっていましたが、今ではそれも過疎ったのか、列車・人数限定で整理券を買って行く必要があります。とはいえ、土日はひと月前の発売直後に買わないと売り切れるほど、そこそこ人気もある模様。


寂寞とした津軽半島を抜けてトンネルへ。何度か通ったことはありますが、海底駅に下車するのは初めてです。駅についても全ての扉が開くでも無く、非常用コックで一箇所のみ開扉して整理券を持った人だけが下車。ホーム自体は大変狭く、30mほど横にある「作業抗」と言われる通路に移動させられ、列車はゴゴゴゴゴと大きな反響音を残して発車。



ほぼ定員の19名がまずは通路に集められ、荷物を鍵付きの鉄棚に預けます。案内をしてくれるのはJR北海道の嘱託らしい、かつては鉄道マンだったらしいお爺さん。門の開扉などのために、JRの制服を着た人も同伴します。簡単な説明を受けて、いざトンネル内ツアー開始。そう、自由に歩けるのでは無く、基本的には案内に沿っていくツアーです。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

竜飛海底駅の駅名表示


この作業抗は、列車の走る「本坑」を工事する作業をするために作られたもので、本坑と平行して本州と北海道を結びます。この、剥き出しのコンクリートで飾られた、いや、飾られてないトンネルの通路は大変に萌え要素。感覚だけで言うなら、ハードさとクールさを兼ね備えた場所で、巨大建築物好きとしても楽しめると思います。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

こんな作業抗が続きます。興奮。


そもそもトンネル内にある二駅は、50kmを超えるトンネル内で万一の事故や災害があった時の避難路として整備されたもの。例えば列車やトンネル内で火災が起こった時は、この坑道を使って風を送り、煙を吹き飛ばすのだとか。その風速、秒速20m。ちょっとした台風です。


作業抗を進みながら、かつての工事の模様はもちろん、例えば染み出してくる海水を地上に送り出すポンプ設備、避難時に使われるトイレや施設、などなどを解説を受けながら見ていきます。ピンクの公衆電話もありましたが、そういえばさすがにここはケータイの電波も入りません。何しろ、海の底からさらに下ですからね。


トンネル開通時はもっと人も来ていたのでしょう、テーマパークを思わせる施設もありましたが、それらの幾つかは朽ちてしまっていました。そんな中、緊急時に使われるのであろう水密扉をくぐり抜け、地上に至るケーブルカーがある「斜坑」へ。ここ海底駅と地上の記念館を結んでいます。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

かつては活躍していたであろうジオラマ

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

ケーブルカーにて地上に至る斜坑


到着したケーブルカーからも人が降りてきましたが、この人たちは地上施設から入場してきた人たちだとか。彼らはこの坑道内の一定区画までしか行けず、駅そのものやホームの方には行けないのだとか。その意味でも、これは海底駅から見学に来る方がきっと絶対楽しい。


ケーブルカーは横に階段も併設され、いざという時はそこから脱出するのでしょう。7分もかけて登り切ったところでケーブルカーのあがり口に風防の扉が閉まり、地下の気密性を保っているようです。実際こうしないと、地上の風がどんどん無差別に吹き込んで大変なことになるのでしょうね。


地上施設は「青函トンネル記念館」。道の駅も兼ねているようですが、津軽半島の突端、竜飛岬にぽつんとたたずむ建物です。ここにも青函トンネルの大きな模型や展示がされています。それらを見ながら建物の外に出てみれば、さすが岬の先端、すごい風です。近くには発電用の風車もまわり、これはこれで味わえる秘境感。ちなみに、遠くない場所に(一部で)有名な「階段国道」があるようですが、さすがにそこを巡る時間は無く。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

青函トンネル記念館、外観
送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

竜飛岬方面の海


40分ほどの見学時間を経て、列車で到着組は再びケーブルカーに乗って地下へ。この、繋がっているのに隔てられている感の強い「地上」と「地下」って、中々得がたい感覚です。それだけ深いところ、何しろ海の底の下まで潜っていくわけですから。このトンネルの完成に寄与した皆さんに感謝を贈らずにはいられません。


坑道をスタート地点に戻って電車を待ちますが、その間に、本坑を覗いて線路や細いホームを見学。線路は北海道新幹線の開通に向けて、在来線の線路の外側に新幹線用の線路を通す「三本ゲージ」になっています。ホームはとにかく細いですが、新幹線の非常時到着のためやたらと長く、駅の照明が煌々と照らします。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

本坑、線路が走るところのホーム


やがて静かな金属音と風の音がしてきましたが、それが徐々に大きく近付いてきます。と、ワシらの乗る列車が来る青森側からだけでなく函館側からも聞こえまして、どうやら貨物列車が通過する模様。今や近づき大きな騒音を鳴らしながら通過していった貨物列車と入れ替えに、函館に向かうスーパー白鳥が停車し、乗車。案内のお爺さんも一緒に乗車。

D
その模様を動画に収めてみました。



トンネル最深部を超えて北海道に上陸。車窓からは、工事中の北海道新幹線の高架が見え隠れします。徐々に深まる夕闇の中、列車は函館に到着。まずは今日の宿である駅前の「ホテルグランティア函館駅前」に荷物を置き、さて飯を食おうか、こんな時間だけど函館山に行ってみようか……と相談してたら、今日は函館山のロープウェイが点検中で、山頂に至る道は一般車も走ってて大混雑、と聞いたので、飯へ。


ワシが函館に行くと必ず行く、うに問屋がやっているうに料理専門店「うに むらかみ」にご案内。すっかりシャッターの閉まった函館の市場の一角にあるので、入るまでは皆さん不安だったようですが、うに料理の数々が届くと一気に美味しい美味しいと、料理に酒も進みます。舌の肥えた方々を案内するので不安でしたが、ご満足いただけたようで良かった。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

「うに むらかみ」にてウニとサーモンの丼


しかし、海鮮だけじゃもったいない、と、函館と言えば塩ラーメンのお店を見学。丼ものを小さいサイズにして〆を捜します。幾つか出た候補の中でワシの美味いものセンサーが反応したのが「しなの」。駅前でホテル目の前って立地も良かったのですが。


塩ラーメンや、ワシは「しょうが塩ラーメン」ってのを、三々五々頼んでみましたがこの生姜塩が大正解。普通の塩も美味いのですが、それなりに脂の乗ったスープながらすっきり上品さが先立っている感で、ところが生姜塩の方は、生姜の風味が脂っこさを中和しつつ味の深みを増して、大変美味しく食べられました。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

「しなの」のしょうが塩ラーメン


その後、少し夜の函館を見て回ろう!と社会科見学。若者が集まっている屋台街に繁華街、最近では五稜郭の方が栄えているってんでそっちまで移動して街をぶらつきますが、メンツがメンツだけに、スナックなんかには入ることも無く、散歩だけして見学終了。ホテルに戻るべくタクシーに乗り込みます。


ここからがさらに大冒険……は言い過ぎですが。


乗ったタクシーの運転手のおばさまがノリのいい人で、ワシがみんなに「函館山は行かなくて良いですかー?」とか聞いてたら、なんなら四千円(一人千円)で山頂行ってホテルまで送るよ!との申し出。距離やらを考えればこれはかなりお得では、と弾き出したので、じゃあ行ってみよう!ということに。


函館山を登る道の途中、「ここからの夜景が綺麗なのよ!」とお気に入りスポットで停めては写真を撮る時間と集合写真を撮ってくれる運ちゃん。山頂でも数カ所のポイントを案内してくれ、函館山からの夜景を堪能。なんでもおばさま、ケータイカメラがお嫌いなようで、曰く「綺麗に撮れてんだかわかりゃしない!」。でワシのカメラで撮ってもらったら簡単操作で綺麗に撮れたのが嬉しいらしく、何度も「バッチグー!良いじゃない!」と連呼。

送信者 秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

函館山からの夜景


帰路につくかと思いきや「まだライトアップされていれば良いんだけど」と函館ハリスト教会に連れてこられ、ライトアップは消えていたのですが、車のライトでワシらを照らして写真を撮りやすくしてくれます。さらに、かつてチャーミーグリーンという台所洗剤のCMで、老夫婦が手を繋いでスキップをするシーンが撮影されたという「八幡坂」、その近くの「旧函館区公会堂」と案内してくれ、どこも夜の中でしたが、結構函館を満喫気分。


チャーミーグリーンの坂で手を繋いでみた。男4人で。


ホテルに帰ってきたのは当初の考えより1時間以上遅くなりましたが、いやはや、嬉しい誤算になりました。こういう人との出会い、触れあいってのも、旅の醍醐味ですね。


ホテルに戻って、ワシは一人ででももう一杯くらい飲みに行こうかと思っていましたが、朝からの行動で、結構歩き回ったこともあって案外疲れてたか、ホテルの最上階にある大浴場にも行かずにそのまま眠りについてしまいました。


夜中、何度か目が覚めたのは、窓に打ち付ける風と雨の音が結構だったから。翌日の小幌駅は、山に囲まれただけの場所、駅舎も無ければ屋根の下と呼べるところもないただの山中だそうです。少なくとも、雨が止んでくれれば良いのですが……。



ところで竜飛海底駅ですが。恐らく、2015年に予定されている函館新幹線の開業後は、少なくとも海底駅で降りての見学は出来なくなるのでは無いかと予想されています。また、地上の記念館が閉まる冬季の見学も出来ません。そう考えると、ここに立ち寄れるチャンスはもうそんなに先までは無いと思われますので、ご興味の方は早めに計画を立ててみると良いかも。


撮影写真集はこちら。

秘境駅の旅<小幌駅&竜飛海底>

あおもり旬味館
http://www.jre-abc.com/syunmikan/index.html
竜飛海底駅見学のご案内
http://jr.hakodate.jp/train/tunnel/kaitei_kengaku.htm
青函トンネル記念館
http://seikan-tunnel-museum.com/
うに むらかみ
http://www.uni-murakami.com/hakodate/
はこだて塩ラーメン しなの
http://r.gnavi.co.jp/6216939/