コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

指を置いたら新世界

過日、銀座にありますギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)に行って参りまして、お目当ては「指を置く」展 。


「指を置く」展 開催中
http://www.masahicom.com/blog/index.cgi/information/20140207puttingfinger-ggg.htm


メディアアーティストの、あるいは「ピタゴラ装置」で有名な佐藤雅彦氏と、メディア研究家齋藤達也氏との二人展です。


勤務先の近くでやってる佐藤雅彦氏の展示会、くらいの前知識、すなわち実質ゼロで伺ったのですが……すごい、これすごい面白い。というか、自分の身体感覚の殻が破られる気持ち。


以下、ワシ同様、前知識ゼロで驚きを得たい、という方は読まないで行ってみてください。いやさ、ネタバレとかがあるものでは無いんですが、先入観は入るかもしれないからね。










ギャラリーに入ってすぐ、小さな机にずらっと置かれたのは……紙。てっきり、インタラクティブメディアを活用したインスタレーションとかがあるのかと思い込んでいた身には、まずその「紙」の展示に意外さを感じます。


プラモデルも、説明書を読まずに作ってしまう(そして失敗もする)ワシとしては、まずは解説は読まずに、やり方だけ読んで各展示物をトライします。基本的に、色々なものが書かれたそれぞれの紙の上に、指示された指を置く、というだけのアクション。


最初の3〜4個をやっても、正直何も感じなかったんです。「あちゃ、これはたいしたことない展覧会だったのかな。無駄足だったかな」そう思っていた時間もありました。


幾つかやってみて、とある作品にやはり指を置いた時、急に「感覚が拓けた」んです。何言ってんだって感じですが、そうとしか言えない実感。指を置いたことで広がった世界を「実感」し、心が急にざわざわわくわくし出したこの感覚を、どう言葉で表せば良いんだか。


喩えとして不適切かもしれませんが、ずっと耳が聞こえなかった人が、治療やなんらかのキッカケの上「聞こえる」という感覚を取り戻す、そのちっちゃい版と言えるかもしれません。指と、指が接地している紙と、自分の感覚とが連続体となって、ひとつに収斂していく。


その時、紙の上の絵や線は、既に絵や線ではありません。ワシが「実感」する「現実」の一部になっていたんです。


その感覚に気付くと、後は五月雨式。最初は何も感じなかった作品も、改めて触るとその意味に気付きます。静かな興奮状態のまま次々と作品を堪能し、最後には映像メディアを使ったインスタレーション的なものもありましたが、それも紙の延長上として捉えられて、楽しめました。


これはある意味で「錯覚」なのでしょう。錯視の絵画にも似た、感覚が騙される作品群。でも今、それを産み出したお二人に、心からの敬意を表したいです。これまでにない「錯覚」と「現実」を感じさせてくれました。


2月28日までの展示で、その後は関西に場所を移して続くようです。ご興味の方で、東京近辺の方はお早めに、関西の方は遠からず、行ってみてください。