キュレーターの素晴らしさ
「日本美術の裏の裏」(サントリー美術館)鑑賞感想。
良かった、すごい良かった。もしかしたら最近見た中でも一番かも。
別に国宝級の作品が来てるとか、初展示のものがあるとか、そういうことじゃない。見せ方の切り口、解説文のセンス、空間の作り方、すなわちキュレーターが素晴らしいのだ。
まずはファサードから第1テーマ「空間をつくる」に掛けての空間の作り方が本当に良くて、いわばツカミはOK。月と富士山の描かれた武蔵野図屏風とか見惚れる。ちょうど鑑賞時期に、洛中洛外図屏風の出てくる小説を読んでいたので、作者はその小説と違えど見方の解説がされてたのすごい良かった。
第2テーマ「小をめでる」では、まるでドールハウスの小物のようなアイテムが、江戸時代に手作りされていたことに驚く。緻密な造りそのものが素晴らしいし、実物と並べて置く展示も良い。
第3テーマ「心でえがく」は、いわばヘタウマを集めた展示。見ているとどんどんとジワる絵巻などが並んでいる。技巧の巧拙に関わらず、自由に描いてるその心意気がいいなぁと感じる。ワシも絵心がないので下手さは負けないのだけど、心の赴くままに描いてみるのもいいのかもしれない。
第4テーマ「景色をさがす」。ここでいう景色とは、焼き物を焼く際に偶然作り上げられた多彩な表情のことらしい。なるほど窯に入れたら出すまでいじれない焼き物は確かに偶然の産物。角度で変わる印象を楽しむのも一興と知る。
第5テーマ「和歌でわかる」駄洒落かーい。和歌を詠むことをラップバトルに喩え、和歌を知ることで見えてくる世界がある解説には納得。
第6テーマは「風景にはいる」。絵の中に描かれている人の目線から景色を見てみよう、という提案は、なるほど絵の見え方を少し変えてくれる。
元々絵画にも日本美術にも明るくないワシだけと、この展示を通じて見方というか、こうして見るのもありなんだ、と一つのスコープを渡された気分。最後、徒然草第52段の絵巻になぞらえて書かれた解説「本展が日本美術の愉しみ方を知るガイドに少しでもなってたら幸いです」すごいなってる!ありがとうございます!