コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

スタシスティーパーティ

ティーパーティ、といっても茶会事件では無い(分かりにくい導入)。


スタシス・エイドリゲヴィチウス、というアーティストがいます。リトアニア出身、ポーランド在住(国籍もポーランドになったそうな)で、ポスターなどのイラストレーションから、絵本の挿絵、昨今ではインスタレーションアートなどでも活躍しています。


昔の日記には何度か出てきますが、ワシはmixiで彼の名を冠したコミュニティの管理人をしておりまして、また彼の作品を知ったエピソードを日記に書いたら、それにイマジネーションを得たに大学の先輩が曲を作られた……なんてこともありました。まぁ、本人と会ったこととかは無いんですが。


「スタシス」コミュ
http://mixi.jp/view_community.pl?id=85985
スタシス作品との出会いの日記
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=6785566&owner_id=65677
前の日記を元にした歌のお話し
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=43774064&owner_id=65677


さて、そのコミュで最近、日本で恐らく唯一のはずのスタシスの常設展示をしている小樽の「森ヒロコ・スタシス美術館」、そこのウェブサイトリニューアルを手がけられた方が、その旨をお知らせするトピックスを立てていらして、さらにそこで、小樽の美術館でミニオフ会を開きませんか?とご提案くださいました。


小樽でオフ会……ワシ自身もそうそう気軽に行ける距離でもないですし、そもそも人が集まるかの不安なんかもコミュの管理人としてはしていたのですが、言うてもワシも旅好きですし、何かキッカケがあれば国内であれば身軽に足を伸ばしてしまうのは昔からの癖(蟹喰いに直江津に行ったり)、ということで予定をやりくりしてそれなりに安い往復&宿行程も手配できたので、いざ、参加させていただくことに。


結果から申し上げると、わざわざ東京(千葉ですけど)から足を伸ばしたかいのあった、素晴らしい会合でした。



往路は朝8:55羽田発のJAL便。前夜からこの日の朝まで通う神社の夜警当番でほぼ完徹、さらにその前夜も月次の業務が多量にありすぎて半徹という、中々に寝が充分でない状況での出立でしたので、機内ではあっさりと爆睡し、あっさりと新千歳空港に到着。


思い返してみれば、北海道に来るのは実に二年ぶり。前回来た時は【一日で日本縦断】企画旅の時でした( http://mixi.jp/view_diary.pl?id=865803040&owner_id=65677 / )。なんかここ10年くらい、仕事も含めて毎年来ている印象があったんで、そんなに間が空いたかというのが率直な驚き。しかし確かに、ケータイ国盗り合戦もコロプラも、北海道はノーマークだったのです。


……そう、今回の旅の主目的はあくまでスタシスのオフ会ですが、国盗りとコロプラのスタンプ稼ぎも、まぁ昨今の旅ではよくある話ですが当然のごとく副次目的に入っています。結果、往路は新千歳ながら、帰路は旭川空港からの便を取っているのです。閑話休題。


新千歳から鉄道で札幌へ。とりま昼飯と思いますが、あまり下調べもしていませんでしたので、そういえば数日前に友人から、納豆カレーがオススメと言われたスープカレーのお店「心」へ、地下鉄に乗り換えて向かいます。きっと友人は下北沢店を勧めたんでしょうけど、いきなり本店に行ってしまうことに。


北海道大学の近くにあって、学生らしき人々もひっきりなしに入ってくる人気店。「納豆とオクラのスープカレー」を注文。辛さやライスの量は調整可能です。さて、食してみると……なるほど美味しい、けど、納豆がスープに浸かるとサラッとしてしまい、少し物足りなさを感じてしまいました。ジャガイモはホクホクしているし、肉とかのカレーならすっごく美味しいと思います。


スープカレー「心」
http://www.cocoro-soupcurry.com/


札幌駅に戻って、函館本線に乗って小樽へ。ここの車窓は、途中から右手に海が続き飽きません。小樽に着いて、ちょっと駅前でもにょもにょしてたら時間が無くなってきたので、美術館までタクシーで向かいます。駅から歩ける距離ですが、そういえば前回は豪雪の中あるいて向かったので、大変な思いをしたんでした。


森ヒロコ・スタシス美術館
http://morihiroko-stasys-museum.com/
前回、この美術館を訪ねた時の日記
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=11083494&owner_id=65677



美術館の扉をくぐると、3人の女性。今回呼びかけてくださった方と、いらっしゃった皆さんでした。森さんも出ていらっしゃったので、皆で簡単に挨拶をしてまずは美術館の見学。ここは、元々森ヒロコさんのご実家だったものを、昔ながらの蔵を展示スペースにしたり、建て替えたりして美術館になっているものです。


森さん、スタシスの作品の他、やはりポーランドのユゼフ・ヴィルコン、またスロバキアのアルビン・ブルノフスキと、東欧の作家の作品が並びます。それぞれ、森さんの旦那さん、この美術館の館長でもある長谷川さんと親交のある・あったアーティストで、やはりそれらを常設しているのも、日本でここくらいでしょう。


展示館になっている蔵と、新しく建てられたモダンな展示館をあわせてもそんなに広くは無い全館をひととおり見終えた集合メンバーは、森ヒロコさんのお声かけに応じて、彼女の作業場に移動します。8畳ほどの大きさの部屋に、所狭しとならぶ棚にテーブル、そして薬剤に電熱器にプレス機。


ここは、銅版画を作る作業場。森さんは、ここで自身の作品を作りつつ、銅版画教室も開かれているそうです。そして、会話の端々から感じてはいたのですが、今日集まった皆さんは皆、ここで一度は銅版画などを習ったり見学したりした方々のようです。


この日もひとりの生徒さんが製作をしておりまして、森さんはその方に教えつつ、銅版画の作り方を教えてくれます。曰く、銅に軽く傷を付けてそれを薬剤に浸すと、その傷は大きくなってインクが入り込むようになります。そこに、好きな色のインクを塗り込んでちょっと特別な紙にプレス機で写せば一丁あがり。再び銅版を洗って色を塗り直せば、また何枚も出来る、というワケ。


いやー、ワシ自身は全く絵心がありませんが、森さんはもちろん、生徒さんも味のある線を銅版に写しだしていて、出来上がった紙のものはもちろん、版を見ているのも楽しいです。森さんは、製造過程で刷り直したものを出しながら、ベタの出し方やらを説明してくれました。


その後、森さんの旦那さんでこの美術館の館長でもある長谷川さんが登場。何しろ豪放磊落な方で、大きな声で信念を熱く語られます。それは、スタシスが何故今の日本の美術界に受け入れられないか、から始まり、美術界そのものの、彼なりに感じておられる問題点。スタシスの話を聞くはずが、途中からそれがそっちのけになったのもご愛敬。何分彼は、スタシスとは30年以上前に知り合い、最初に懇意にした日本人ではないかと思われる方なのです。


話は継続しつつ、ご夫婦がお持ちのスタシスのレアな画集や、日本未発売の画本の数々を出してきてくれて、ここで美術館の二階にあるご自宅にお邪魔して、ティーパーティをしながらの鑑賞タイム。


いや、これは本当にどれもレアでした。ネットで見られるスタシスの作品もあるにはあるのですが、これまでまったく見たことのないイラストが多数収録されており、また若いころ描いていた本国で出ている絵本なんかもあって、パラパラめくっているだけでほんわりしてきます。まさに、至福の時間。


最近のスタシスは、イラストもやりつつインスタレーションや写真を多くやっている模様。彼のイラスト作品を写真化したり、自身や家族をモデルにしたり、また日本では、昨年の越後妻有アートトリエンナーレで、田んぼの中に結構大きな「船」の作品を作っていました。その帆ひとつひとつは、スタシスのイラストです。


その間も、長谷川さんの熱い語り口は続きます。つい勢いで、ワシ自身ちょっととんでもない約束をしてしまった気がしますが、まぁなんか、実現したら結構とんでもないことが起こりそうな気がするので(自己満足的な意味で)、ちょっとどこかで本気だそうかな。



なんだかんだと18時近くまでお邪魔しておりまして、いい加減、日も傾いて参りましたので、散々世話になった礼を申し上げて、美術館を退去。おひとり、途中で帰られてしまったので残るは三人なのですが、皆さんなんだかんだと予定が大丈夫そうと言うことで、小樽で一緒にご飯を食べていくことに。


小樽に旦那さんのご実家がある、という方にご案内いただいて、ちょこっと運河なんかを見学しつつ(前回来た時は豪雪の中の運河だったんで、かなり印象が違いました)、その方のオススメでもある「海猫屋」という洋食レストランふうのお店に入ります。


海猫屋
http://www.uminekoya.com/
http://r.tabelog.com/hokkaido/A0106/A010601/1001015/


外観は、倉庫ふうの赤茶けた壁に蔦や緑の木々が這い、薄暗くなった宵闇の小樽に不思議な存在感で屹立しています。中に入れば昔のモダン喫茶を思わせる小洒落た内装で、二階への階段も、壁の作りや窓の薄暗さも、なかなかに良いムード。


小樽の地ビールや北海道のウイスキーなんかも用意され、料理もどれも概ね美味。創作系のメニューも多く、味付けは濃いめ、地物の海の幸はもちろんのこと、野菜も新鮮で食べてて楽しくなります。なるほどこれは人に勧めたくなるお店です。


そして、何より楽しかったのはスタシストーク!や、当たり前ですがファンが集まったわけですし、ワシも含めてまず皆さん普段の生活の中で「スタシスファン」ってのには出会いませんから、この超レアなパーティでは思う存分、彼の作品との出会いや感じているもの、もちろんそれ以外の話もですが、で盛り上がります。や、ここまで深くスタシス話をしたのは初めてだ!


そこそこ飲み食いして、たっぷり喋って、小樽に残る一方を置いてワシともう一方は札幌へ。往路は電車で来ましたが、夜はバスからの夜景がキレイなんです、という言葉に誘われて、高速バスに乗って札幌に向かいます。車中では、旅のお話しで盛り上がったりして、いやはや札幌駅での解散まで、楽しみっぱなしの午後でした。


ひとりになって、すすきのの先にあるホテルにチェックインした後、国盗りやコロプラで深夜近くの札幌を縦断してみたり、晩飯たらふく食ったのにすすきの「芳蘭」でラーメン食べたり(これも美味!)、翌日はやはり国盗りコロプラで旭川空港から帰ることにしていて、朝飯の駅弁を食べた一時間後には旭川でも「梅光軒」なるラーメン(これもそこそこ)を食べたりしたのは、また別のお話。ちなみに東京に帰ってからは、会社の人の結婚パーティに参加して、その足で生放送の現場(ほぼ日刊イトイ新聞編集部)へ行きました。バタンバタン。



幾ら好きな作家のためとはいえ、千葉から札幌・小樽まで行くなんて馬鹿げているかもしれません。でも、普段の生活の中でこの作家について話せる相手が中々いないのは事実で、そんな人が集まるという気配を感じたら、この無駄にアクティブな性格が黙っていませんでした。結果、滅多に見られないであろう画集なども見ることが出来、まさに至福の時間、まさにそこまで行ったかいのある会でした。


お声かけいただいた方、お集まりになった皆さん、森ヒロコさんに長谷川館長、ホントにありがとうございました!そしてこの楽しい集まりが出来ることになった、遠い国のスタシスにも、感謝を。





写真は、1枚目が恐らくどれも日本では未発売のスタシスの画集や絵本、2枚目が銅版とその時の色づけで出来上がった作品、3枚目が海猫屋の蟹入りのパスタ(取り分け後)。