コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

タフトレイル、タフトラベル

前のテキストからも、帰京してからも一週間が経ってしまいました礼文島・利尻島の旅。実質的な最終日、9月17日(月)の記録というか備忘録。


前夜は一旦は寝たものの、真夜中前に目が覚めて、3時過ぎまでもにょもにょしてて、やっと寝付いたと思ったら4時半の起床時間。まぁ、起きられただけでも御の字でしょうか。登山準備と帰京準備とに荷物をそれぞれまとめて、5時、精算を済ませて帰京荷物を宿に預けて、宿の車で利尻岳「鴛泊コース」の登山口「北麓野営場」まで送ってもらいます。


まだ日の出前の薄暗い中、軽く準備運動をして5時15分に登山開始。すぐにある日本名水百選のひとつ「甘露泉水」で水分補給&水筒に水を詰めます。700mlの水筒の他、1.5lと500mlのペットボトルを持っておりまして、正直多すぎるかな、と思うほどの水の量ですが、この先水場の無い利尻岳ではやはり安全を考えるとこれくらいは、と、昔トレッキングで脱水症状になったことのあるワシは思ってしまうわけで、実際、無駄にはなりませんでした。


林の中、基本アップたまにダウンのある細い道を、少しハイペースで登っていきます。登山口は三合目ということですが、六合目までは似たような景色が続く中、1時間半ほどで到着。ここは「第一見晴台」とも言われるところで既に標高は760m。今日はすぐ下が雲に覆われて見晴らす余地も無いなぁ……と少し広いので朝メシの弁当を広げると、ちょうど徐々に雲が晴れ始めて、上はまだガスっていますが下界は良い眺めに。


だいたい近い時間に登り始めたであろう人が何人か、皆さんここで一休みをされるので、挨拶を交わしたり、他にも弁当を広げる方もいたり。だいたいここで挨拶した方々、ワシみたいな単独行もいればカップルでの登山もおりますが、多少のペースの違いはあれど、山頂までの要所要所でまた一緒になったりします。


7時過ぎに再び登山開始。この先は、森林限界もあるのでしょう、比較的木々の背も低くなり、その内腰や肩くらいまでの植物ばかりになります。すなわち、稜線さえ良くて視界が晴れていれば、概ねどこでも絶景。とはいえ、6合目くらいからは登りの角度も厳しくなり、見渡す余裕が減ってくるのも確か。


第二見晴台でゆっくり休憩を取って、そこからすぐ、8合目の長官山と言われる峰に着いたのは8時15分ころ。ここまで来てやっと利尻岳山頂がくっきり見えます。が、まだまだ遠いな!ここの標高は1218m。山頂までの標高差はまだ500m。水と栄養分変わりのチョコを摂取し、たっぷり20分も休憩を取って、登山再開。どうやらワシは、休憩を多めにとって一気にペース早めに登って、の繰り返しが自分的には楽なようです。


九合目。利尻岳登山は、八合目なり九合目なりで「半分行ったと思え」と言われるほどらしく、実際九合目の表示板には「ここからが正念場!Tough Trail!」なんて書かれています。そして実際、ここから山頂まではきつかった。斜面が急角度だったりってのもあるのですが、それ以上にしんどかったのが足下のガレ場。細かいだけでなく、崩れやすく滑りやすいときたものです。設置されているロープにつかまらないと上がりにくいところもしばしば。


体力的にも集中力的にもいっぱいいっぱいになりながら、それでもなんとか10時25分、1719mの利尻岳北峰山頂に到着!


いやぁ、8合目までは標準タイムよりもかなり早く登ってきたのですが、8合目以降のラップタイムはほぼ標準タイムで、結果、約5時間での登頂。山の標高だけで言えば過去登った立山などの方が高かったりしますが、登山口からの標高差1400m以上を登ったのって初めてでは無いかしら。


山頂には、日本の山にはありがちですが小さい社が設けられており、広さはそこそこあります(15人くらいはのんびりできる)。すぐそこには南峰と、天に向かって屹立する蝋燭岩。本当は、1721mの南峰が山頂らしいのですが、崩落がひどく危険が大きいため、登山者の往訪は禁止しているのだとか。


少ししてから、途中で挨拶した方々が何人かあがっていらっしゃり、互いの登頂の健闘を称えて、お喋りしたり弁当を広げたり、思い思いに過ごします。小雨は降っていますし山頂より上には雲が溜まっていますが、幸いにも下界の方にはあまり雲はなく、遠方はともかく近場の眺望は良好。利尻島内はもちろん、稚内や礼文島もよく見渡せます。


単独行で途中途中の休憩で一緒になった若い女性が、やはり単独行だった男性と「沓形コースで降りません?」てことでワシも誘われましたが、沓形コースは上級者向けですし結構危険な箇所もあるようで、雨のことや下山タイムを考えると……とワシはお断りし、1時間ほど山頂に滞在して単独行で鴛泊コースを下山することに。結果的に、この判断はワシ的には正しかったようで。


というのも下り道。小雨だった雨はどんどん強くなり、九合目までのガレ場でも何度か滑りそうになりましたが、その先も含めてとにかくしんどかった!木々の背が低い六合目までも、下生えの草草についた水滴がパンツや靴を濡らし、あるいは服の袖を濡らして、衣服は重くなり冷たさで体温を奪われます。(もちろん、雨具は使っていますが)


周囲の木々が高くなってからも、枝から落ちる水滴に冷やされ、足下はぬかるみ、石の上に降りていくと足の裏が痛み、ともうこのまま降りるのを諦めてしまおうか、と思ってしまう精神状態。実際何度か朦朧としちゃった場面もありました。これで、往路に使わず道も分からぬ沓形コースで降りてたらどうなっていたことやら……むしろあの二人は無事かな?(事故のニュースは聞いてないので、もちろん無事でしょうが)


下りは、とにかく早く降りたい一心で休憩少なめで降りてきたのに、それでも標準的な下山ラップタイムよりやや遅い時間になってしまい、疲労度と足りていない精神力がうかがえます。一応、予定通りの15時半を少し回って、登山口まで帰還。なんとか帰還、という心持ち。宿に電話をして迎えに来てもらう間に着替えて、人心地。



その後、利尻島を出るまでに島内にある温泉入ったり土産物屋を冷やかそうと思っていましたが、体力の消耗と雨足が「船、出られるの?」ってくらい嵐に近くなってきたので、一本早い船に乗ることにして、それまでフェリーターミナル前の「さとう食堂」で「うにラーメン」とビールで登頂祝い。ミシュラン北海道に載っている店、って書いてありましたが場末の食堂ふうでして、うにラーメンはワカメとあわせて磯の風味が強くまぁまぁの味でした。


稚内行きの船はツアー客で大混雑。室内椅子席カーペット席ともに確保できず、一旦は屋根下のデッキに落ち着きますが、雨こそ凌げど強風はあたるので、船内に戻って隅っこの廊下に場所を陣取ります。まるで、全席指定席「ムーンライトながら」になる前の、大垣行き夜行列車に乗った時のような。やはり疲れはひどく、廊下で寝てしまいます。


稚内に着いてもまだ雨。タクシーで港から近い「稚内天然温泉港のゆ」に移動して、22時の閉館まで休むことに。比較的新しい温泉施設のようで綺麗です。泉質は極めて普通ですが、露天風呂からは稚内の漁港が見えたり、中々に風情もあるかも。漁港で取れたものか、刺身盛り合わせに施設のオリジナルビールなんかを空けて、休憩所で横になって体力回復に努めます。


閉館になったので、またもタクシーで稚内バスターミナルに移動。23時発の夜行バスを待ちます。が、バスターミナルと思って着いたところは稚内駅。ワシの知らない新し過ぎる駅舎になっていて、JR駅とバスターミナルと道の駅と映画館とかいろんな施設が入った複合駅舎になっていました。それでも残る、日本最北端の終点レール。そういえばJR最南端にもつい三ヶ月前に行ったばかりでした。


夜行バスに乗れる程度には体力が回復した、と思い込んで乗り込みまして、そのままシートで爆睡。何度か目は覚めましたが、あっという間に早朝の札幌駅に到着。駅弁を買って新千歳空港に向かう列車に乗り込みますがまさかのロングシートで弁当が食えない、と思っていたら架線故障で千歳駅にて列車が止まってしまいました。しかも、しばらく動かない、だと……。


空港に急ぐ乗客は慌てて代替手段を捜しますが、タクシーは長蛇の列、バスは来るのかどうか分からない、という大変な混乱っぷり。JRからは代替について何のアナウンスも無く、やばいやばい、と思っていたら今度は「電車が動きます」との報。そこで駅に入ったらもう出ちゃっている。ようやくタクシーを捕まえて知らぬ人と同乗して空港に向かいながら航空会社に電話をすれば、JRから遅延の連絡は来ていないから振り替えには証明書が云々。


……と、かなりJRの対応に不満を覚えるレベル。空港には出発時刻の10分前に着いて、もう目的の便はダメか、と思っていたら、その頃ようやく連絡が行ったのか、保安検査、出発ともに何とか通過させてもらって、目的の便に乗ることが出来ました。焦りと不満と疲労とで汗だくになって、ようやく機内で駅弁を広げますが、ちょっと匂いが強かったかも。恐縮。


羽田からはそのまま出社。金曜日の夜に仕事はけてから飛行機乗って、夜行バス乗って、朝から礼文島で登山して、雨中トレッキングをして、翌日はサイクリングロードを走ったりもしれ、さらに翌日は利尻岳を制覇して、また帰りは夜行バスに乗って、飛行機で戻ってそのまま火曜日朝に出社。うん、我ながら頑張りすぎた。まぁでも、仕事始める頃にはそんなに疲れを感じず、夜はそのまま宴席にも行ってしまう始末。


歳は重ねましたが、まぁまだワリと無茶な、というかタフな旅を出来るな、という、よく分からない感慨を味わった旅になりました。



写真は、1枚目8合目長官山から利尻岳山頂方面。2枚目利尻岳山頂から南峰と蝋燭岩、間に見える町は沓形。3枚目さとう食堂のうにラーメン。