コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

ナイアガラの国境越え(徒歩)(北米大陸ぼっち横断6)

カーテンを閉め切っているとはいえ、半モーテルの1階の部屋。すぐ外にはナイアガラの滝へ下る道。遮光カーテンの隙間から差し込む微かな光に、車両や人々の賑やかな声が聞こえてゆっくりと目を覚ますと……やばい、寝過ぎた!


5月9日。旅の6日目は慌ただしさからスタートです。





寝過ぎた、と言っても実は9時ちょっと前。この旅中、次の日の予定を立てるためとかでショートスリープ&朝4時起きがデフォになっていたので出遅れた感はありますが、そもそもその早起きの疲れが溜まっていたのかもしれません。13時過ぎにナイアガラフォールズを出るシャトルバスに乗ることは決まっているので、さて4時間ほどでなにから優先的に行こうかな……。


バックパックはホテルに預けて、軽い荷物でてくてくと歩いたのは、もちろん前夜に引き続いて滝方面。でも今日は、滝の側に行く途中にあるスカイロンタワーに立ち寄りです。昨夜も思いましたが、ナイアガラの滝は大きすぎて全容が中々見えない。遊覧ヘリにでも乗ろうかなぁ、とぼんやり考えていましたが、寝過ごしたおかげで乗り場までの移動とかを考えるとちょっとなぁ……(高いし)、ってことで、ここは素直にタワーに登ることに。がこんがこん言いながらエレベーターは展望台に到着し、さて如何ほどの景色かな……。

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<アメリカ滝>

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<カナダ滝>

わお、雄大!


や、実は前夜滝を見た時に、暗かったせいもあってか「やー、確かにでかいけど、でかい白糸の滝って感じじゃないの?」なんて思ってたんですがごめんなさい(白糸の滝も好きですが!)。上空から見るとその雄大さというか壮大さというか巨大さというか、とかく修飾語に「大」を入れたくなる気分です。

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<アメリカ滝、カナダ滝を両方入れようとすると28mm広角でも間に合わない>

滝自体もさることながら、その水が流れてくるナイアガラ川の上流は、たっぷりの水量をゆっくりと運んできます。目線を反対側に移せば、そこに広がるカナダの大地も雄大。160mのタワーからは遙か彼方の地平線までを見渡せます。

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タワーを降りて、滝に近づきます。今日も近づくほどにすごい音圧。特にカナダ滝の方は、霧雨のような水煙が歩道まで漂ってきて、歩いているだけで全身がじんわり濡れてひんやりします。ビューポイントのテーブル・ロックからは滝の上部、流れ落ちるそのポイントが見えますが、その迫力もさることながら、強化ガラスのような深い水色が印象的です。

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<カナダ滝に近づいていきます>

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<この深い水色に5分くらい見惚れていました>

ここまで来たら裏側からも見たいよね、ってことで、滝を下&裏から見えるジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズへ。もらったポンチョを着て、エレベーターで降りて掘られた岩盤の中の道を辿っていくと、滝を真横にしたバルコニーで……これまたど迫力だな。

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<下から>

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<裏から>

見えるもののすごさのワリに、語彙の貧弱さが嫌になりますが、他に何を言えば良いのか分からない、数十メートルの先にある圧倒的な自然の力を感じます。





地上に戻ってまだ11時前。これなら間に合うかな、と、徒歩でアメリカに越境することにします。そう、ここはカナダ・アメリカの国境。ナイアガラ川に掛かるレインボー橋を渡れば、そこはアメリカです。やはり、あまり歩いての国境越えという経験がないものですから、ナイアガラの滝を別角度から見る楽しみも込みで行ってみましょう。


ちなみに、以前徒歩で国境を越えたのは、出張で行ったシンガポール。空き日が出来たので、同僚達とマレーシアに歩いて越境してみました。ネット情報では「歩ける」と書いてあり、実際シンガポール側のイミグレーションオフィスには徒歩用の通路もあったのですが、実際に行ってみると歩道が整備されているワケでもなく、車道の端をとぼとぼ歩く程度。マレーシア側のイミグレスタッフには「物好きもいたもんだ」って感じで笑われてしまった思い出です。閑話休題


カナダ側から渡るには50セント必要なレインボー橋、そのほぼ中間のINTERNATIONAL BOUNDARY LINEと書かれたところで記念撮影。そしてアメリカ側に渡ると当然あるのがイミグレーションオフィス。意外にも手荷物検査はされませんでしたが、お決まりのやり取りをしてさくっとアメリカ入国。やー、何がってワケじゃないですが、国境のない国に住んでるとこういう経験も楽しいものです。

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<国境を股に掛ける男>

アメリカ滝の近くの展望台に行ってみると、何かチケットが必要な模様?よく分からないまま並んで、わお、20ドルもするのか、と払って入ってみましたが、これ、確かに滝の見やすい展望台に入れて、且つ船で滝壺まで行けるツアーのチケットだった模様。近くには無料展望台もあったのですが、ちょっと時間に焦ってよく分からないままに動いてしまいました。


で、時間に焦り始めているくせに、せっかく買ったのだから、予定はしていなかったけどその「霧の乙女号」に乗って滝壺に行ってみることに。と、乗り場に降りていきますが……あれ、3分前まであったチケットが見つからないよ?と、たっぷり10分近くも荷物をひっくり返して、見つからないし時間も無いし、諦めて戻るか……と言う時に見つかるのが法則。ポンチョを受け取って、いざ乗船。


これは……痛快!乗って良かった!離岸した船はゆっくりアメリカ滝の近くを通り過ぎ、ここもそれなりの迫力ですが、やはりすごいのはカナダ滝の下。まだ100mは先にあろうに、叩きつけられて舞い上がる水しぶきが全身を濡らします。滝壺まで来たら、手を滑らせそうなケータイを取り出すのはもう無理で、なんとかデジカメで何枚か撮影をしつつ、すぐに滝を眺め水を浴びる体験にシフト。カッパの下までずぶ濡れですが、もー、気持ちいい!

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<アメリカ滝を真横から>

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<カナダ滝を真っ正面から。もうこの段階でカメラ操作は困難>

船はアメリカ側に着岸。迎えのシャトルまでの時間がかなり逼迫しているので、そのまますたすたとレインボー橋へ。アメリカ側から渡る時はお金は必要無いようです。カナダ側ではまたイミグレーションオフィス。少し並んでいるのでまた焦りつつ、抜ければ小走りでナイアガラフォールズの繁華街を駆け抜けます。滝の水と汗でぐしゃぐしゃになりながらホテルに到着。荷物を受け取って数分後に、迎えのシャトルバスが来ました。危なかった!





ナイアガラフォールズからニューヨークまでのルートはいろいろ悩みまして、シンプル且つ日本人にはまだ馴染みのある、トロント空港に戻って飛行機でとかも考えたのですが、どうやらナイアガラのアメリカ側にバッファロー国際空港ってのがあって、そこ行きのシャトルが手配できそう、ってことで、来た道を戻るよりは先に行った方が楽しかろう、ってことで、自分的にはちょっとしたアドベンチャー気分です。


そして、てっきりナイアガラフォールズ、さっき歩いて渡ったレインボー橋からアメリカに行くのかな、と思ったら、シャトルはカナダ側をずんずん南下。あれ、もしかして乗り間違えた……?と不安になりドライバーに聞いてみますが、どうやらバッファローの街にもナイアガラ川を渡る橋があり、そこで国境越えをするようです。

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大きな橋を渡り、シャトルは一時停止。パスポートをドライバーに預け、やってきたイミグレスタッフに見せています。ワシの他はカナダ人の老夫婦がひと組。てっきりすぐに通過できるのかな、と思いきや、シャトルは駐車場に連れて行かれ我々も降ろされ、広いイミグレオフィスに通されます。名前の呼び出しを待ってカウンターへ。よくある問答を続けますが、ここでちょっとイレギュラー。


アメリカでの滞在先を聞かれ、今回ニューヨークでは友人の家に泊まる予定だったので、その住所を捜し出すのに一悶着。やー、たまたま前日に、住所もらっておいて良かった。もうひとつは、パスポートの出入国記録を見て「あれ、あなたさっきもアメリカ入ってない?」とのことで、ナイアガラでの観光でちょっとだけ入ってカナダに帰ったんだよー、ということをアピール。事なきを得ましたが、英語に話せないワシにはちょっとしたハプニング。


イミグレオフィスを出て、シャトルはバッファローの街中へ。老夫婦はどこぞのホテルで下車して、バッファロー国際空港まで行ったのはワシ独り。空港は、日本の地方の空港に比べれば遙かに大きいのですが、北米で言えばすごく小さい部類でしょう。とはいえ、改修されたてなのかかなり新しく、セキュリティゲートの先にはお店も充実しています。


寝過ごしてから観光しっぱなしだったので、今日の一食目はやっとこの空港でターキーのパニーニ。軽食ながら美味しかったのですが、ポテトの代わりにポテトチップスを付けてくれるセンスはどうなのかと。だったら無しで良いから!ともあれ人心地ついて、旅の終点も見えてきて、一安心です。しかし、前日朝のバンフは氷点下だったのに、バッファローは31度ってどういうこと?(暑い……)


さて、マイルで取れたデルタ航空に乗って、いざ、ニューヨーク!





ニューヨークに来るのは、12年ぶり2回目。飛行機を降りたJFK国際空港は相変わらず巨大で、どんなに歩いても出口に辿り着きません。と言っている間に乗り継ぐエアトレインの駅について……あれ、何か足りなくない?


そう、入国審査をしていないのでした。さっきバッファローでやってからの国内線移動なので当たり前ですが、なんか感覚ってのはおかしなもので、ついついイミグレがあるものだとばっかり。ともあれ、これで一応、距離のほとんどを飛行機で詰めてますが、北米大陸横断しました!と言っておきたい!

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<デザインの気に入った、エアトレインのロゴ(シートに書かれた線路と飛行機の)>

エアトレインと地下鉄の接続駅で友人と合流。年に一度、彼が日本に一時帰国するたびに会ってはいるのですが、それでも久しぶりの再会を喜びます。とはいえのんびりしている時間もなく、地下鉄に乗って目指すはブロードウェイ。


そう、この友人は大学芸術学部の同期(彼は放送学科、ワシは文芸学科)なのですが、サウンドエンジニアの勉強をしており、この度、ブロードウェイ・ミュージカル「gigi」のアシスタント・サウンド・デザイナーを担当し、プレイビルにも名前が載っているのです。すごい!


学部柄もあり、作家や芸能界、エンタメ業界で活躍する同期や友人も多いですが、ブロードウェイで活躍する人が出てくるとは在学中は思わなかった。ワシが何をしたわけでもありませんが、なんとなく誇りを持った気分です。




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上映されている「Neil Simon Theatre」に到着。表に出ているスタッフとも気軽に話している友人を見て「すげーすげー」を連発するミーハーなワシ。と、彼が劇場の前に連れてってくれ、何が起こるかと思ったら……楽屋から、キャストが飛び出してきて、路上でダンス!


これ、土曜日ソワレだけのイベントで、向かいのシアターの役者とエール交換をしているのだそう。確かに、道路の向こうにもひと賑わいがありました。いやー、こういう文化ってすてきだなぁ。

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<一番手前が、主演のヴァネッサ・ハジェンズ

シアターは、1,000人以上が入る立派なもので、この日はほぼ満員。賑やかな中、幕があがります。本作「gigi」初代ブロードウェイミュージカル版はオードリー・ヘップバーンが主演で、映画版は日本でも「恋の手ほどき」というタイトルで公開され、アカデミー賞9部門も受賞、とどちらも1950年代のことですが、中々に華々しい経歴の作品。


今回はその2015年版ですが、ジャンルとしてはロマンス・コメディ。19世紀パリの上流階級を舞台にしており、シナリオの構造は舞台的というかシンプルで、とはいえ現代ではあまり共感されるようなものでは無い気もしますが、そこは音楽とダンスの素晴らしさで魅せています。英語の分からないワシでも、事前に友人から話の筋を聞いていたおかげもあって、すごく楽しく観賞しました。何より、ジジ役のヴァネッサ・ハジェンズがキュート!25歳らしいですが、10代とおぼしき役にも無理がありません。


終演後、友人の厚意でバックステージツアーに参加させてもらうことに。ブロードウェイの舞台のバックステージなんてそりゃ見たいに決まってますがな!セット、装置、オケピ、奈落と巡らせていただき、狭い空間を効率的に使い且つ最大限の効果を出すべくプロの仕事がぶつかりあっている……言葉にすると当たり前かもしれませんが、それを現場として見せられると圧巻です。


彼の仕事である、シアターで聞こえるサウンドへのこだわりを話してもらいましたが、感銘を受けることばかり。仕事の内容は違えど、お客様にどれだけ満足してもらえるか、そしてその為にはこだわりを前面に出さない「自然さ」が如何に大事かを、改めて認識します。いやはや、良い体験をしました。





バックステージから出てくれば、時刻はもう23時過ぎ。晩飯どころを捜してNYの街を彷徨います。この時間になると、酒場はまだまだこれからですが、食べられる店が少なくなっているようで、ふらふら歩いてヘルズ・キッチンとも言われているらしい9番街で開いてた、ハンバーガー屋の「Chelsea Grill」に入店。


薄暗い雰囲気の店で、独りでこの時間だと物怖じしそうですが、住んでる友人もいれば気も大きくなるもの。バドワイザーやローカルビールに、ブルーチーズ入りハンバーガーを、ブルーチーズ苦手なのに注文。これが美味かった!ベーコンやパテの肉肉しさに、ブルーチーズがむしろさっぱり感をもたらします。不思議なハーモニー!

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食後、さらに夜のタイムズスクエアまで散歩して、さすがに26時近くなったので地下鉄で彼の家に。そう、今回2泊ほど、彼がルームシェアをしている住まいに泊めてもらうのです。NYは今、えらいホテルの値段が上がっているらしく、友人がいれば泊めてもらうのは結構常態化しているとか。ワシも、宿は寝るだけの場所なので、とてもとても助かります。

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<深夜のタイムズスクエア>


そんなこんなで友人の部屋に入って、まだ酒を飲んで語らっていたらいつの間にやら寝落ち。たっぷりこってりの一日がいつの間にか幕を下ろしていました。