コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

箱根・ラリー、再発見

先日6月9日〜10日と、大学の出自ゼミの「ゼミラリー」なるイベントに行っておりました。まぁ何度か日記には出てきていますが大まかに言えば、行き先を知らされないまま集合して、行き先に向かいながらクイズを解いたり、行き先でもまたクイズを解いたりで、その得点を競う、という内容。クイズラリー、とも称します。


30年以上に渡って続いてきたゼミの先輩から後輩までが一緒になって、もちろん運営幹事もゼミメンバーがやる、年に一度のお祭りであり、同窓会のようなものでもあります。主宰していた先生は四年前に亡くなり、現役大学生の参加、後輩の増加は止まりましたが、このイベントはまだまだ続いています。


ワシは昨年「オフィシャル」と呼ばれる幹事でしたが、今年はいち参加者。そして、今年は例年と違う幾つかがあらかじめ表明されていました。


●目的地が明示されており、今回は「箱根」。まぁこれ(目的地明示)は、最近はたまにあること。
●コースは二つからの選択制。現地へ向かうロマンスカーの中で希望を取る。
●クイズは「一問のみ」で、問題もあらかじめ明示。
●オフィシャルが3名。通常は5〜7名。


おお、異例づくしだ!これは、どうなってまうんや。。。



とはいえ、集合の朝の新宿駅に行くまでワシの心にはひとつの疑念がありました。今年のオフィシャルをやっている中のH先輩は特に、トリックスターとしてゼミ内では有名。もしかして、これだけ事前情報流しておいて、新宿着いたら全然違うところに連れて行かれるんじゃ無いか……しかし、渡されたのは箱根フリー切符とロマンスカーの指定券。どうやらスタートはまっとうなようです。


展望席にこそ着けなかったものの眺望の良い一号車に陣取り、諸先輩方と一緒に朝からロマンスカーの車内で飲んだくれ始めます。諸説明やコースを聞かれ、ワシは「歩く」と聞いていたBコースをあえてチョイス。Aコースがあまりに一般的なコースだったのと、Bコースは行ったことないところが多かったのと、何より歩くの好きだしね。


箱根湯本に着いたら大雨。ここでコースが分かれます。50歳前後が多い先輩方はAコースが多いかと思いきや、意外にも8割がBコース。まずは「あじさい寺」とも呼ばれる「阿弥陀寺」を目指します。本当は足で登るはずが、年配財力と雨のおかげでタクシーで向かうことに……でも、阿弥陀寺への道が細くタクシーが交差できないということで、結果、なぜかワシ一人歩いて急坂を登ることになってしまいました。良いんだけどね。。。


雨のしのつく境内、あじさいはまだまだ1分咲きくらい、堂内に入れていただき幕末の悲劇のヒロインとされている「和宮香華院」の御仏を拝見させていただくことになっていましたが、急遽住職の琵琶法師を聞かせてもらうことにもなり、帰りしなは抹茶に羊羹を召し、濃縮した参拝というか観光になりました。


下山は、ほとんどの人は歩きで、参道の石段を降りて箱根登山鉄道塔ノ沢駅へ。一気に強羅まで登り、バスに乗って「箱根ガラスの森美術館」へ。まずはレストランで昼食を取りますが、中々の混雑、それでも20人近くがほぼまとまって入れました。カンツォーネの生演奏なんかもあり、そのイタリア人歌手もノリがよく、案外面白い。味はまぁまぁ、かな。


その後は時間まで館内を散策。ヴェネチアン・グラスの展示なんかを見ていると、二年前に行ったことを思い出します。微細な模様の美しいグラス群は眺めていて飽きません。嘘、少し飽きるかも。まぁ歴史も込みで見ると良いのかもですね。


そこからはホテルに向かうという予定でしたが、先輩のひとりが「ロープウェイ乗ろうよ」と言いだし、オフィシャルの先輩が調べたらどうやら30分くらいの遠回りでいけそう、ということで急遽桃源台にバスでまわり乗ることに。この辺も、例年のゼミラリーらしくなく、まぁそもそも数十人を連れてるワリには急な予定変更過ぎですが、これがどうやら大正解。


桃源台から大涌谷を経由して早雲山まで行く箱根ロープウェイはその景観の良さで知られますが、この頃には雨も上がり早く流れる雲と差し始めた陽光の中、18人乗りのゴンドラを一個占拠した我々は、特に女性陣ははしゃぎまくりの写真撮りまくりで、今回の旅の中でみんなのテンションが一番上がっている時間になりました。なんじゃそりゃ。(写真一枚目、大涌谷ではしゃぐ女史先輩方)



早雲山からケーブルカーを少し降り、宿泊地、強羅ホテルへ。いわゆる昔ながらの観光ホテルといった趣きです。もちろん温泉も付いており、まずはひとっ風呂浴びて宴会場へ。こちらも昔ながらの大宴会場といいますか、なんともいちいちノスタルジーを感じます。てことで乾杯!


てまぁ、疑い深いワシはこの時間までもずっと、どっかでいきなりクイズが始まるのでは無いかしらん、と警戒心を持ち続けていたのですが、宴席は続き宴もたけなわなところでクイズタイム。そしてそう、事前に知らされていた一問が出されて、回答があり、正解者への賞品授与があり、クイズパートは終了しました。(写真三枚目、宴もたけなわ)


宴会場を退出し、部屋に移動してからの二次会。まぁたいがい、ここで企画や進行に対して参加者がオフィシャルにツッコミを入れるのが恒例行事なワケですが、今年は紛糾しました。というのも、先述のように余りにも例年の造りとは違いすぎて、まとめれば「慰安旅行的な感じとしては楽しかった。でもこれは『クイズラリー』なのか?」。


もちろん、今年のオフィシャルはその批判を承知でこのプランを進めたわけで、その意味でも、毎年オフィシャルは何かに「チャレンジ」しようとするゼミラリーではありますが、今年はとびっきりチャレンジングだったと思います。肯定派、批判派、慎重派、そしてオフィシャル当人含めて、みんな酔っ払いのくせに結構喧々囂々の議論。


でも、実はこの時既に結論は出ていた気がしていて、まぁそれはワシ視点に過ぎませんが、酔っ払ってこうして議論をしあえる場こそが、結局のところ「ゼミラリー」ではないのかな、と思うのです。旅のスタイルや企画の内容はその年その年で様々ですが、それを肴に30年も年の違う同士が話せる。


さらに言うならば、ワシは、自分がオフィシャルをやったらこの形式を思いつかないだろうし、実行しようとしないと思います。だから、自分に出来ないことを出来る人を素直にすごいと思ってしまうワシは、今年のオフィシャルの悩み抜いたであろうこの旅と実行したチャレンジングな意思を、すごいと思うのです。


てことで、それに触発された、ってワケでは無いですが、飲みながら「来年のオフィシャル、立候補いる?」って話になった時に、酔った勢いもあり思い切りよく手を上げてしまい、さらにワシの後輩も数人、後を追ってくれまして。既に企画の素案は打合せをしてしまいました、とさ。



前夜の部屋飲みも3時には終わり、5時までやってたかつてほどの勢いは無いですが、それでも朝食会場では早くも日本酒が振る舞われて、朝から飲んだくれる姿勢。良い気分でチェックアウト後は、ケーブルカーに並行する坂を少し降りて「強羅公園」の上部入口(西口)へ。園内の花を愛でたり、体験工房を覗いたりしてみましたが、体験工房、楽しそうですね。今度時間があればガラス吹いてみたい。


そして強羅公園で何よりきゅんとしたのは「白雲洞茶苑」。いや、古びた建物で抹茶をいただいたのも良いのですが、苑内を見学してたら、大きな窓が切り取られた先に、青々とした緑と箱根大文字。おお、これ、広告で見たことある!(そこ?)や、まぁそれもそれですが、何より吹き抜ける風が心地よく、窓の外はどこまでも緑で、陽光に照らされる窓枠の影と大変美しいコントラストを作り出していました。(写真二枚目、広告ふうに)


強羅公園を退出し、登山鉄道に揺られ宮ノ下下車、富士屋ホテルに向かいます。個人的には、一度ここのカフェに「寄木細工スイーツ」なる、寄木細工をイメージしたケーキを食べに来たことがあるくらいで、何度かこの近くの日帰り温泉とかに来たことはありますが、「箱根を代表する伝統的で、でも高いホテルなんだろうな」な認識でした。


が、今回、ホテルのコンシェルジュの方による富士屋ホテルの歴史と館内案内が企画されていまして、かなり見方が改まったというか、むしろ今度泊まってみたい!と思うほどに。や、創業者が明治初期に単身渡米して、「これからは牧畜だ!」と乳牛連れて帰ってきたけど流行らず、でもその牛が高額で売れてその金でホテル作ったとか、ステキ過ぎるだろ。


ランチは富士屋ホテルのメインダイニング。ワシは「海老ライス」という、和風海老チャーハンを頼みましたが、こいつがバターっぽいものでしっかり味付けされた濃厚なライスと、他にもいろいろ旨味の詰まった味わいを堪能しました。要は美味かったけどよく分からなかった、ってことですが。


宮ノ下駅に戻り、駅前のカフェで持ち帰りの串ものを頼んだら、電車の出る30秒前に完成して危うく乗り過ごしそうになるトラブルを抱えながらも、一行は無事箱根湯本まで戻りまして解散。ここで土産を買う人、時間が無く一足先に帰る人(ワシ)、この後小田原で後夜祭とばかりに先生の追悼飲みをしていく人、様々にばらけまして、ワシの今年のゼミラリーは終わりました。



今回も幾つかのことに気付いた旅でしたが、まずはなんと言っても、何度か行っている箱根ながらまだまだ知らないところ、知らないことは多いな、ということ。自分で計画したのでは見逃してしまうポイントや個人で手配しづらいものなんてのも、こういうゼミラリーという場でなら体験できて面白い。


そして、この「ゼミラリー」というイベントそのものの可能性。先生が他界した後、何のために残された教え子たちはこれを続けているのか……この問いはたぶんずっとつきまといます。そんな中で「先生ならどう言うか」を想像して企画&参加し、「みんなと会え」るこのイベント、そのひとつの定型外を見て、このイベントの可能性が少し広がったのかな、と思います。


他人から見たら、いつまでも亡くなった方を追いかけているだけのように見えるのかもしれません。でも、それだけの結びつきを残し、世代を超えて遊べる「場」を作ってくれた先生に、毎度のことながら感謝し、また楽しんでいくのです。



参照サイト

阿弥陀寺
http://homepage2.nifty.com/amida/
箱根ガラスの森美術館
http://www.ciao3.com/
強羅ホテル
http://www.kitetsu-hotel.jp/hakone/
強羅公園
http://www.hakone-tozan.co.jp/gorapark/
富士屋ホテル
http://www.fujiyahotel.jp/