コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

物語の欠片

twitterで書いたことのまとめ直しですが。


「草子ブックガイド」って漫画が、最近ちょっとお気に入りです。


週刊モーニング誌にたまーに掲載されていまして、今週号で久々に拝読しました。公式サイト( http://morningmanga.com/lineup/129 )の作品説明を引用しますと、

内海草子(うつみそうこ)は本を読むのが好きで好きでたまらない中学生。いつも本を読んでいて、本の中の世界にひたっている。内気で、他人と打ち解けるのが苦手な草子にとって、古書・青永遠屋(おとわや)の店主は良き理解者。読んだ本の感想を描いた草子の「ブックガイド」が、店主を喜ばせ、さらには周囲の人々に本を読むことの素晴らしさを伝える。濃密な絵柄で、読書の魅力を最大限に表現する。

とのこと。


まぁキャラの設定はともかく、本屋と文学作品がモチーフになっている時点でワシが好きになる要素満載なワケですが、で、今週号で読んで気付いたことは、ワシは物語(特に小説)の見解交換がとても好きだったな、ってこと。


てのも、今回取り上げられている作品は井伏鱒二の「山椒魚」だったのですが、「ブックガイド」を通じた主人公草子による作品への思い入れ(それすなわち作者の思い入れと言っても、この漫画の場合間違いでは無いでしょう)を読んで、ワシも何かを言いたくなってきたのです。


それは、「山椒魚」という作品そのもののワシの感想でもあり、知らなかったエピソードへの感心でもあり、草子と言う人物(人格)がそれに与えられたものへの感慨でもありました。


ちなみに知らなかったエピソードとしては、井伏鱒二の「山椒魚」には三編あって、さらにその原型となる「幽閉」という作品があること(文学は好きだけど文学史には弱いのです)。今度、全部読んでみたいものです。児童向けの「山椒魚」があるとは知りませんでした。ちなみについでに、引用されてたヘッセの詩もよかったのでメモ。「ヘッセ詩集」(高橋健二訳)より「書物」


さて。基本的に、物語ってのは独りで楽しむものだと思っています。だから、映画だって芝居だって一人で見に行っちゃうし、小説だってそもそも一人で読むものです。ですが、感想の交換もとても楽しいもの。それは「孤独は楽しいが、孤独が楽しいと語り合える友を持つことは幸せだ」ということに、少し似ている気がします。


大学の頃は、文芸学科という場にいたおかげもあり、先人達や同時代人達の作品はもちろん、自分達で書いたものも含めて、物語への見解を交換し合ったものですが、最近はとんとしてないな、ってことにふと気付かされました。共通の作品でも良いし、自分が読んだことが無いものでも構わないと思うのです。知らない作品を語られることで興味を持ち素晴らしい作品に出会ったことも、皆さん多々あるでしょう。


そう、ワシは『真っ当』に、物語(小説)の会話がしたいんだな、ってつくづく思うのです。「面白かったー」「イマイチだね」だけではない、もちろんその直感的な感想も大事なのですが、より深い作品見解の交換。これは正直、自分もですが、ある程度の知見のレベルを求められるので、どうしても上滑りしてしまっている人との交換は、イマイチ盛り上がれない。まぁ昨今は、そもそも何らかの作品について交換することが出来ていない。


誰かの感じた物語の欠片を覗かせてもらうのは、多角に切られた宝石を覗き込む時の、連なる輝きを数えるのに似ていると思うのです。それは、数え切れないけど、飽きないことだと思うのです。