コトノハのシズク Blog(仮)

肉の妖精のライフログ。

聖地巡礼〜久高・沖縄の旅2〜

久高島はよく「神の島」と呼ばれるようですが、それなら正確には「神の降りた島」というべきなのかもしれません。琉球神話において神ないし人の始祖が降臨した、いわば沖縄開闢の伝説が残る地が、久高島なのだそうです。てまぁ、生半可な知識ですが。


思えばワシは、波照間島といい、「ニライカナイ」伝説が残る地に強く惹かれるようで、久高島にもそんな伝承、ニライカナイから五穀の種が流れ着いた、とかがあるようです。


ニライカナイって、語感も好きですが、「遥か彼方の理想郷」という概念も好き。いわばワシは、その言霊に取り憑かれているのかもしれません。



21日土曜日。


酔いと疲労でフラフラになりながらも満天の星空を眺めて宿についたら即意識喪失。夜中数度目覚めますが、なんとか想定通り朝5時前に起床。宿の屋上から、朝焼けの「微速度撮影」に挑戦します。


微速度撮影とは、数秒ごとに一コマ撮影して繋げることで、何分何時間に及ぶ景色の変化を数十秒にまとめてしまう手法。30コマで1秒ぶんですから、5秒に1コマ撮影すると、1時間撮り続けても24秒にしかなりません。


ただその映像は動画サイトによくあがっていて、それはそれは美しいのです。と、ワシが買ったムービーカメラをよく見れば、「タイムラプス」と言う全く同じ機能がついてるではないですか!テストも兼ねて撮影してみます。


まぁとはいえ、カメラを三脚に乗せて位置と角度を決めて設定してしまえば、後は赤いRECボタンを押すだけ。我ながら、中々良いものが撮れたので、編集していずれ公開したい所存。

6時過ぎて、二度寝しても良いのですが、まだ目は冴えてるし、朝の涼しい内にちょいと集落見て回るのも良いんじゃない?


結論:まったく涼しくなんかない。


自転車で、宿から港方面を経由して集落、そして集落内にある「聖地」を巡りましたが、7時前なのに汗だくです。これはワシの新陳代謝が良いからとかってレベルじゃない。今日もすごく暑い。


故に、集落内聖地、「久高家」「御殿庭(うどぅんみゃー)」「大里家(うぷらとぅ)」「外間殿(ふかまどぅん)」と、祭祀場を回りましても、聖域にありがちな「凛」とした空気というよりは、じとっとした熱気に包まれ、まぁこれはこれ、土地に合っていて良いものです。


そうそう。この先も含めて、聖地の解説をひとつひとつしていったら、文字数が幾らあっても足りないので、文末の参考サイトや「久高島神話」などで検索なさっていただければと思います。悪しからず。


汗だくで宿に戻って、さすがに疲れて昼寝……朝8時台に昼寝もないですが、まぁ仮眠とって調べものをして10時過ぎ、今日の本格起動です。


と、その前に腹ごしらえ。島では比較的早い時間に開店しているという港近くの「食事処けい」へ。ちょうど開店したところらしく、まだ冷房が効いてないからと屋外席に収まります。料理待ちの間、急にスコールが降ってきて、屋外とはいえ屋根の下なので余裕ですが、この、青空が見えながら降るどしゃ降りに「ああ、島にいるなぁ」と実感。


注文は、朝の駆けつけオリオン生ビールと、この店では評判の「海ぶどう丼」。沖縄料理でお馴染みのあの海ぶどうが丼飯の上に乗り、魚貝の刺身が和えられ、甘味と酸味のあるタレが掛けられています。


海ぶどう丼の味は、中々に絶品な逸品でした。噛み応えのある海ぶどうってのも珍しいと思いますが、弾力ある実が本当に弾ける感覚。タレも程よい。久高島では海ぶどうを養殖しているらしいので、もしかしたらそれかもしれませんが兎に角美味。


接客、は問題ないにしても少し会話のやり取りに残念な一言があったことだけが残念でしたが、満腹満足な朝飯を終え、島巡りを開始します。ルートとしては、東側の道を北上し、浜を幾つか舐めながら最北端へ、そこからは西側を南下し、この島最高の聖地「フボー御嶽」は終盤に訪問。



久高島の東側は基本的に浜が地続きになっていますが、道路からのルートで幾つかのエリアに分かれています(遊泳禁止のところもあります)。


南から、「ぴざ浜」、「たち浜」、ニライカライの来訪神が訪れるという拝所もある「イシキ浜」、二千年前の貝塚があるという「シマーシ浜」、星の砂がいる「ウパーマ」。


まぁ正直風景はどこも似たようなものですが、その似た風景がどこも素晴らしい。晴れ渡った青空に浮かぶ白い雲、潮が引いた遠浅の海。沖縄の夏に来た実感です。あ、ワシは足を海に浸したくらいで泳いではいません。水着もないし。


島北部、カベールの植物群落、とされるエリアを抜けて、最北端「はびゃーん(カベール)」に到着。各浜に立ち寄りつつも僅か一時間、やはり小さい島です。ここは、琉球の始祖「アマミキヨ」が降り立ったという伝説があるとか。確かに正面には真っ青な海が広がるだけ、何か降臨しても不思議ではありません。


たっぷり30分以上、撮影したりのんびりしたりして、自転車で南下を開始。この植物群落内の道は、背の高い緑の葉の中を黄色い砂利道が伸び、空の青とのコントラストが鮮やか(下写真)。


一見脇道ながら、島北部にしては珍しい舗装道、ここも左右に草が迫り過ぎですが、どうやらこれが「ロマンスロード」と呼ばれる遊歩道。縫っていったら、東屋もある崖の上の広場にでました。


方角的には西向き、沖縄本島が見えるワケですが、ここからの夕日は美しそうです。タイミングが合えば、今日の夕日を微速度撮影で撮りに来てみよう、っと。


自転車をさらに走らせ、ある意味久高島のメイン、最高峰の聖地「フボー御嶽」に到着。案内板こそありますが、たまに来る観光客以外は人っこ一人おらず、風の音、虫の鳴き声、鳥の嘶き、木々のざわめきだけが耳に痛いです。


ここは「イザイホー」と呼ばれる、12年に一度行われる、しかし1978年以降途絶えている祭祀の場所。入り口にも掲げられていますが、何人たりとも立ち入り禁止、草木ひとつ持ち出すことも許されません。ちなみにその神事は女性だけで行われるので、完全なる男子禁制。


最近流行りの言葉でいうなら「パワースポット」として紹介され、ネットにもそんな書き込みが散見されますが……残念ながら、霊感0の神主(心得見習)であるワシは、神秘的なものを感じませんでした。(無論これは、この地の信仰を否定するものではありません)


それでもこの地の神聖な空気を吸い込み、雰囲気を味わって、また南下を開始。ヤグルガー、と呼ばれる神女が禊をする井戸にはたどり着けず、島民のとおぼしき墓所群、海ぶどう養殖所をかすめ、集落を抜けて港に帰還。3時間弱、ゆっくり島を回ってきました。



何はともあれビール!と、また店を変えてレンタサイクルもやっていり「さばに」へ。生を早速二杯頼みますが、どうやらこちら、生はオリオンではなく発泡酒の模様。とはいえこの暑さと喉の渇きを癒してくれるなら関係ねぇ!と一気に煽ります。うめぇ!


海ぶどうも入った刺身の小鉢を出してくれて、店の看板娘という犬とじゃれていたら注目したものがやってきました。それは、イラブーを練り込んだ麺を使い、さらにイラブーの筒状の切り身(海蛇だしね)が乗ったイラブーそば。


やー、海蛇とはいえ濃い焦げ茶色の蛇皮が乗っているのは結構なインパクト。味の方ですが……イラブーを練り込んだという麺はやや柔らかいですがほんのりイラブーらしき風味も漂い、悪くない。ではイラブー本体は……ほとんど骨と皮で、実が余りありません。その実も若干の苦味があるぱさぱさしたもので、美味いもんじゃない。


ま、あれですな、出汁が出きっているのと、イラブー自体は高級薬膳、すなわち滋養強壮が目的ですから、味は二の次なのかもしれません。ワシ的には、経験値が増えてネタになったのでOK!


店にいる間、昼便のフェリーが着いたらしく、意外なくらい自転車を借りたり昼食を取る客が押し寄せます、っても20〜30人程度ですが、島の規模を考えれば多い。どうやら多くの人は、海水浴かサイクリングで数時間滞在して夕方の最終便で本島に戻る模様。


宿泊客も一泊が多いようで、ワシのように「中丸一日」を島で過ごすのは、珍しい、と言うほどではないでしょうが、多数派では無い模様。しかしこの時点で、ワシは既に「丸一日でもまだ足りなくね?」とすら感じていました。や、島を回るだけなら、海水浴だけなら3時間で足りる。でも、それだけじゃないんだよなぁ。。。


おやつに、甘く煮た金時豆に沖縄の黒糖で作った蜜をたっぷり入れたかき氷、と解説されている「ぜんざい(黒糖蜜入り)」とやらを追加。黒蜜も豆も確かに美味しかったですが、氷の溶けるのが早くて最後は豆が水浸しになっていたのが残念。


アルコールが入って元気が出た気になったか、二周目としてもうちょい島を回ろうかと動き始めますが、時間も暑い盛りの15時前後、さすがにへばってしまい、宿に戻ってシャワーを浴びて小休止。2時間ほど昼寝をして、夕焼けの撮影に備えます……寝過ごさなければ。。。



18時過ぎに昼寝から起床。今日の日没は19時22分とのことで、余裕で間に合います。カメラと三脚をもって再びロマンスロードへ。途中、日の傾き薄暗くなりかけているフボー御嶽にも再び寄って、立ち入れるところからもう少し詳細に観察(下写真)。


それが、神さまの怒りに触れてしまったのでしょうか。


ロマンスロードの広場まであと少しというところで、突然のスコール!幸いにも木の茂った下にいたので最初こそ濡れませんでしたが、雨足は急速に強くなりあっという間に体に当たってきました。傘を持っていましたが、荷物をカバーすると背中が濡れる濡れる。あとちょっとだから!と雨の中を東屋まで走ってようやく凌げました。5分もしたら雨も止み、あっという間に東屋外のベンチも乾いて、機材の置ける状態に。


大洋に沈みゆく太陽を見ながら時はゆっくりと過ぎ去ります。撮影中はすることもないので、夕日をツマミに買ってきたオリオンビールの缶を開けて、のんびり。海から柔らかく吹き寄せる風が心地良いです。雲に見え隠れしながらも定刻に太陽は沖縄本島の地平線に沈み、実はここからが夕焼けの本気タイム(下写真)。


以前も、確かヴェネツィアに行った時に書いた気がしますが、太陽が沈むとみんな展望台とかから去ってしまうのですが、空が本当に赤くなるのはそれ以降なんですよねー。この日はそこまでの赤味にはなりませんでしたが、やがて沈みゆく細い月も見えるようになってきて、それすらも覆い隠す闇が訪れます。


……闇?


集落から大きく外れて、木々の茂みの中をやってくるこの場所。もちろん、街灯なんかありません。闇があっという間に周囲を飲み込みます。もっとも、対岸の明かりもあるし、闇は自身と引き替えに空の星を明らかにしますが、地上を明るく照らすほどでは無く、照らせるはずのお月さんはもうすぐ西の空に沈みそうです。


こ、こ、こ、こえええええええ!


それでも、一応満足行くまでカメラを回して20時過ぎ。携帯LED灯を持ち歩いているので手元明かりは確保できますが、本当に暗いです。わろえない、これ、わろえないレベル。えぇと、一応自転車の明かりとこのLED灯だけで集落まで10分くらい漕がないと……。


ワシは霊感が無いと先に書きましたが、同時に信仰上の理由からいわゆる「幽霊」を信じていません(「霊(みたま)」は信じている)。大袈裟に言えばそれが功を奏した帰り道。道は本当に真っ暗で、左右の木立は闇をより深くし、自転車のライトとLED灯の届く範囲外は視界0。これ、幽霊を信じる人なら泣きながら救助を呼ぶレベル。


まぁ自己責任で、きちんと帰ってきたので良いのですが、少しばかり心が疲弊しました。そこに追い打ちを掛けるように、21時ラストオーダーの島唯一の遅い営業をしている「とくじん」が、まだ20時40分頃に行ったら早仕舞いをしていて晩飯を食いっぱぐれて……やっぱり、夕方のフボー御嶽で何か怒らせちゃったのかしらん……(禁止されていることはしてませんよ!)。


こんなこともあろうかと、非常食代わりに持ってきていたピーナッツのお菓子をもそもそと食べながら夕食。と、22時まで開いている(はずの)「すみれストア」に、前日行った時カップ麺とか置いてあったじゃん!と思い出しましたが、自転車で3分のそこまで行く気力も無く、もそもそと食べ終えました。


まぁそんなしょんぼり風味に締めてしまった、聖地・久高島の一日。でもそれは、とても刺激的で、楽しく、素晴らしい風景たちと出会うことが出来ました。ここが、聖地の他には「何も無い島」だなんてとんでもない!とても満ち足りた一日でございました。



沖縄情報IMA-神の島・久高島(久高島の神話や各施設の解説)
http://www.okinawainfo.net/kudaka/kami.htm