ブラタモリ「釧路湿原」私的まとめ
※釧路湿原(撮影筆者)
テーマは「世界に誇る釧路湿原のスゴさとは」。釧路湿原はたぶん3~4回は行ったことがあるが、その広大さと、鉄道に乗りながらの左右の風景は日本でも類を見ない絶景だと思う。
そんな釧路湿原は、日本の湿原面積の三割を占めるらしく、元々は釧路あたりから山の方まで続く海の入江だったが、西方にあった砂丘が六千年前から延びてきて入口を閉じ、山から流れ出る土砂が入り込み、三〜四千年前から今の状態になっている。
通常、それくらいの時間があれば、湿原には木が増え森が出来「陸地化」をするのだが、それが昔のまま保たれているのが、世界的にも珍しい釧路湿原の凄さなのだとか。では、その理由は何か。
まずは湧き水。昔の地形の影響で海性段丘の砂地が広がっており、2万箇所以上の湧き水があり、それが湿原を潤している。
そして釧路川。釧路湿原の中を走る鉄道、釧網本線はかつての海岸線に線路が敷かれているらしいが、車窓に見える釧路川はほとんど動きの無い、凪いでいるような流れが特徴。その理由は高低差の無さ。なんと4kmで1mしか下がらないのだとか。これはすごい。
川は流れがゆっくりだと川筋は横に広がり蛇行し、雨が降ると広い川のカーブから水が溢れる。また砂丘が入り込んだ結果、川の流れが複雑化し、時には海から山の方に流れることすらある。それらの現象が湿原の隅々にまで水を届け、空気の入った泥岩の層(枯れた植物が分解されずに積み重なった層。四千年掛けて4mの厚さになった)を作り、陸化しようとした所が湿原に戻る。
これを番組では「4000年掛けたアンチエイジング」としていたが、すごいしっくり来る言葉!
釧路湿原には、氷河期の生き残りの草花も残っているのだそうで、その理由は霧。しかもここでは動きが特異。気温差で出来る霧は、釧路沖、黒潮と親潮のぶつかりで発生し、普通は陸に上がり消え去るところが、湿原の湿気で霧が強まり、その結果、摩周湖にまで至り「霧に隠れる摩周湖」という絶景を見せている。
ちなみに、湿地と湿原の違いについても説明がされていたが、植生が違うのだとか。湿地にある草原が、すなわち湿原。なるほどまんまだ。
※釧網本線の車窓、飛び立つ丹頂鶴(撮影筆者)
遊んでみた〜マーダーミステリーゲーム
昨日プレイしたマーダーミステリーゲーム「王府百年」所感。
そもそも何それ、という方も多いと思うけど、このゲーム、まず各自がプレイするキャラクターとその設定、背景を与えられ、他のプレイヤーとの議論や密談、取引を通じて、各キャラクターのミッションを達成する、会話型の推理ゲーム。
〈参照〉
概要
https://note.mu/t_mizutani/n/n66619a7c1e9e
遊び方の流れ
https://note.mu/t_mizutani/n/na9734d2434ee
中国では「謀殺之謎」と呼ばれ、食事をしながら楽しむ遊戯として流行ったらしく、最近日本にも輸入されて徐々に市民権を得ているのだとか。東中野のディアシュピールなるボドゲ屋でやってる会は、毎回満員の盛況っぷり。
特色の一つは、シナリオはきっちり決まっていて且つミステリーなので、一つのシナリオは一度遊んだら、成功失敗問わず二度と遊べないこと。その点はリアル脱出ゲームにも通じるところがある。
今回遊んだ「王府百年」は、中国の都市開発プロジェクトの始まりを祝う会食のあと、関係者が死亡しているのが見つかり、その原因(犯人)を探すのがメインミッション。ワシがプレイしたキャラクターはマークスという名のロシア人投資家で、彼を含め全キャラ、設定に基づくサブミッションもある。
前述の通り、各キャラには詳細な背景設定と当日の行動が決められており、それを会話しながら、時には嘘をつき、時には隠し事をし、互いに探りあいしつつ犯人を見つけていく(犯人はバレないように誤魔化していく)。その点ではロールプレイ要素も強くて、没入感がある。
元々中国のゲームなので、今回は日本の有志が翻訳してくれたツールを使用。元の設定の作り込みの甘さや、翻訳ものゆえ認識しづらい部分(翻訳が悪いのではなく、元々の文化やニュアンスの違いが表現しきれない)はあったが、それはさておいても大変に面白かった!
ワシはこのタイプのゲームには馴染みがあって、言うまでもなくTRPG。ミステリー系のシナリオを遊ぶセッションの感覚に近い。TRPGが、キャラは基本的にプレイヤーが作るのに比べて、予めキャラ設定が固定化されているのが違い。そして、サイコロは用いず会話のみで進めるのも違いと言える。
TRPGではGMを務めることもあるので、プレイ後はこのゲームの可能性の広さを感じて軽く震えてしまい、作る側になりたい欲求すら生まれてしまった。合う合わないは当然あるけれども、体験型遊戯が好きな人には全力でお勧めしたい!
縁と絆と紡ぐもの〜塩田千春展
「塩田千春展 魂がふるえる」(森美術館)に行ってきた。
ワシが氏の作品に初めて触れたのは、2009年の越後妻有アートトリエンナーレ(大地の芸術祭)に出展していた「家の記憶」という作品。古民家に糸を張り巡らせ地元住民の家具などをよりつけたインパクトを覚えている。
http://www.echigo-tsumari.jp/artwork/house_memory
「縁」や「絆」を「糸」で表すのは、日本人的にはシンプルな思考ではあるけれども、氏はそれを徹底的に突き詰めている感があり、またそれを広い空間に表現する構成力は本当にすごい。さらに糸はそれらの概念を超え、血管だったり喪章だったり宇宙だったり、氏の手によってどこまでも広がっていく。
今回最も好きだったのは、糸に紡がれたトランクが坂道のように連なる「集積-目的地を求めて」。反対側から見た時の影の落ち方も好き。
高層階からの眺めも盛り込んだ感のある「小さな記憶をつなげて」も、場所を活かした展示で良かった。
また氏は、学生時代に迷いから絵が描けなくなったらしいが、近年は描いているのかやはり糸が意図的に使われた作品もあって、これも、一見わかりやすいメタ感から引きずりこまれて、なにかと思考の海を漂いたくなる作品群だった。
入り口としては大味で、故に人目を引きやすく、だがどこまでも深掘りできる、氏の表現とはそういうものなのかな、とワシの目には写った(もちろん全然的外れかもだが、一鑑賞者の素直な見解)。
見て良かったなー。オススメ。
すごい日本地図
すごい日本地図があるとDPZの記事で拝見して行ってみたら本当にすごかった。
日本列島の立体模型地図がすごすぎて動けなくなりました https://dailyportalz.jp/kiji/should_see_the_three-dimensional_map_in_tsukuba
場所はつくば研究都市群の中にある地質標本館。隣はJAXAだけど互いの入口は歩いたら10分以上かかりそう。
入口の吹き抜けにはいきなり、裏返した日本地図と長さの違う棒に吊るされた大きさの違う球。これ、地底から見ているイメージで、日本で起こった大きな地震の震源の深さを棒で、マグニチュードを球の大きさで表している。何それ早くも大興奮!
で、件の日本地図。本当にすごい!
立体造作された地表と海洋が下地となり、タッチパネルをいじるとプロジェクションマッピングで映像が投影されて、ベースになる地図や、鉄道網、河川網、等高線等深線、断層や構造線などなどが様々に切り替わる。すごい、すごいしか出てこない(語彙力)。
日本って細長い国土なのに山岳国家だし、海側もすぐ近海に深いところが並んでいるし、小笠原諸島の海底火山と島の紙一重さもあるし、地球規模で「起伏に富んだ土地」だなと思わさせられる。
そんで、ポチポチいじってると、なんとなく今自分が日本を支配している気分になれるのも楽しい。
別の部屋には、環太平洋の地形が分かる模型があるのだけど、これもすごい。分かっちゃいたけど、やはり日本近海は様々なプレートが沈み込んでいる海溝のデパートなんだけど、これ、大陸側(中国側)から見ると、日本の向こうに崖があるようにしか見えないのな!と一緒にいた友人が言ってて得心した。
他にも、火山と温泉の関係(これも日本とその周辺が高密度!)、日本を貫く中央構造線とフォッサマグナと断層の展示、石や化石の展示(都道府県の石なんてあったの初めて知った)などなど、たっぷり楽しんでしまった。これで無料とかなんなの。ネ申なの。
夢中になりすぎて隣のJAXAの展示を見に行く時間が取れず(まだ行ったことない)だったし、科学をテーマにしたイベントとかをあれこれやっているみたいなので、ここら辺はまた来たい!
いらつく作家〜クリスチャン・ボルタンスキー展
クリスチャン・ボルタンスキーの作品は、いつもイライラさせられる。
それでもやはり展示があると聞くと行ってしまう。それだけ、ワシの心にぞわぞわを植え付ける現代アーティストなワケだけど、今回、国立新美術館でLifetimeと名付けられた回顧展をやるってんで、やっぱり来てみた。
そして、とんでもない疲労感を持っていま、会場を後にしている。
いや、理由は分かってるんだよね。氏の作品は常に「消失」を意識させられる。有り体に言えば、「死」を直視させられる。物理的には非暴力(アート作品だから当たり前)なのに、心の奥底に向けてとんでもなく暴力的に、「死」を語りかけてくる。
だからいつも、生という名の急流に飲まれ溺れているような苦しさを覚える。
たくさんの点灯する電球が置かれた部屋、その電球はこの会期中に3つずつ消えていき、最後の方の日には暗い部屋になっていく「黄昏」という作品が、今回は特に響いた。分かりやすいが故に染み込む消失の実感。
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そしてこの後、SNSでの友達からの情報で、「エスパス ルイ・ヴィトン東京」でやっていたボルタンスキーの映像作品の展示「アニミタス2」も行ってしまった。まさかのはしご。まぁそっちは、そこまで抉ってこない作品だったのでのんびり楽しんだけど。
サメの泳ぐプール〜むろと廃校水族館
徳島に肉を食いにきたついでに、高知は室戸岬足を伸ばしてやってきました、「むろと廃校水族館」!
2001年に休校、2005年に廃校となった室戸市立椎名小学校を再活用し去年開館した水族館なんだけど、もう、25mプールでサメが泳いでいる写真を見た瞬間に魅せられて、今回の旅路に盛り込ませてもらった。
でね。最悪時間なければそのプールだけ見られれば良いやと思ってたのね。
とんでもない!ここ、他の展示もすごく楽しい!
まずは学校の設備を活かした展示。とび箱や手洗いや机椅子などを上手く使ってる。
次に、デザインや設計のコンセプトの良さ。学校であることを下敷きにしつつ、洒落たアイコンや、逆に懐かしさを感じる展示をしている。理科準備室に人体模型と一緒に魚の骨が飾られてるのとか唸った。
そして、キャッチーさ。「屋外大水槽(25mプールとも呼ばれています)」に泳ぐサメやウミガメを惹きにしつつ、屋内の展示も大変キャッチー。まず明るめなので水棲生物がよく見えるし、ウミガメ水槽に主的な大きさのがいたりもする。
美しさ、懐かしさ、楽しさ、そう言ったものが刺激されまくっているのに、入場料は600円(大人)と破格。ここは面白かったし、長旅をした甲斐があった!なんならまた行きたいわー。
メディア芸術祭2019
文化庁メディア芸術祭受賞展行ってきた。
ずっと国立新美術館=六本木だったので気軽に行こうと思ってたら、今年はお台場でちょっと遠征感。日本科学未来館とフジテレビ湾岸スタジオ。
アート部門。例年だけど、ハマるものとそうでないものが二極化してて、それはアートというものの特性上当然ではあるんだけど、今年の大賞作「Pulses/Grains/Phase/Moiré」は個人的には全然響かなかった。
強く響いたのは、バクテリアを題材にした生物学の論文をバクテリアに食べさせる、という「Culturing <Paper>cut」。もはやアートとは何かを問い直すレベルだけど、表現としては入れ子構造とメタ的な収束を感じて、いろいろ妄想が膨らんだ。
もうひとつ、精神的に不安定になりつつ気持ちよさも感じたのが「datum」。『空間を表すXとY、色の混合要素R、G、B、フレーム数にあたる時間Tの、6つの数値を空間座標として持つ点として捉えると、映像中の全画素を6次元空間に浮かぶ点の集合と考えられる。』何言ってるの?って思うじゃん。でもその場に立ちすくむと、この『6次元』を浴びている妄想が捗る。
紛失騒動で話題になった「Watage」はシンプルに綺麗。
エンターテインメント部門の大賞は、さすがの人気「チコちゃんに叱られる」。着ぐるみとCGを合成させる演出の面白さよ。
優秀賞には、結局遊びに行けなかったスクラップさんの「歌舞伎町 探偵セブン」、Perfumeのテクノロジーパフォーマンス、そして「TikTok」と横綱相撲感あるラインナップ。
そんな中、認知症が進み子供返りしていく祖父と、美大に通い大人になっていく孫娘に、やがて同期する瞬間が現れるという「春」という映像作品が気になった。「ふたり、思春期」というコピーも良い。
アニメーション部門は、原作小説好きな「ペンギン・ハイウェイ」の受賞が嬉しかった。アオヤマくんとお姉さん(そしてお父さんも)、やっぱり好きだな。会場で知って気になったのは、スタジオポノック製作の「透明人間」と、「The Little Ship」なるロシアの短編アニメ。
マンガ部門の受賞作に読んだことあるのはひとつも無かったが(推薦作品の「ブルーピリオド」くらい)、画力の無駄遣いと評されたギャグマンガ「宇宙戦艦ティラミス」が気になったので読んでみたい。
会期は今週末まで。無料だよー。
http://festival.j-mediaarts.jp/